五つ葉のクローバーの超主観的考察

~恋愛マンガの名作「めぞん一刻」を皮切りにラブコメ漫画の気になった点を超わがままに考察しています!~

アニメ「彼女、お借りします」の感想~アニメと原作を見比べてみる!~

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宮島礼吏講談社・「彼女、お借りします」製作委員会 キービジュアルより引用

当ブログでも取り上げている「彼女、お借りします」のアニメ放映が2020年9月で終了しました。12話の構成で7巻50話の途中までの内容でしたが、作画も回を追うごとに安定し、内容も要点を抑えた仕上がりだったと思います。特に12話で千鶴が口にした言葉の数々は気持ちの込め方が半端でなく特筆ものでした。そして作品のイメージに直結するOPの歌『センチメートル』も頭に残るメロディで良かったかな~と感じます。

アニメを見て思ったのは、このマンガ・・実は回想を交えるなどして丁寧に心情ややりとりを描いていたんだなぁということ。主人公である和也の気持ちや行動をメインに描かれていることもあってか、吹き出し外のセリフや下ネタじみた言葉が多い本作ですが、千鶴が和也を意識し惹かれていく様もかなり丹念に描かれていることがわかります。

当ブログではそんな千鶴の心情に絞って感想&考察を書いているわけですが、だからこそ残念な部分も少しありました。特に気になったのは次の2つのシーンがカットされたことでしょうか・・

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彼女、お借りします 25話より

①【4巻(25話)】
瑠夏が二人の住むアパートに突如やってくる直前、栗林の前でレンタル彼女であることをばらしたことをドア越しに聞いた際のシーン。「もうレンタルやめた方がいいのかもなって」と話す和也に対し、千鶴は「ちょっと待ってよ」「勝手に決めないでって言ってんの・・」と否定するのですが、アニメではこの部分のみカットとなりました。

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彼女、お借りします 40話より

②【5巻(40話)】
ベランダに落ちていたパンツを千鶴の物と思ったことから部屋を訪れた瑠夏を交えてのパンツ騒動に発展するシーン。現れた千鶴を追い返そうとする和也の言葉に対し「そのことなら・・もう・・」と意味深な発言をしましたが、アニメではパンツ騒動そのものが全カットとなり、このシーンも描かれませんでした。

①は千鶴も和也とのレンカノ関係を心地よく思い続けたいと思っている・・②は栗林にレンカノだと話したのだから瑠夏との仮カノ関係を解消して欲しく思っている・・とも取れるシーンで千鶴の本音が垣間見えた部分。どちらの反応にも和也は「水原・・??」となっているのだから重要なシーンであるのは間違いないところ。

ただ作中では和也を意識しているようなシーンが多いのは確かであり、この場面をカットしても物語的に問題になることはなし。特に40話のパンツ騒動はベランダでの逢瀬開始と②を描きたいがために無理やり入れた感がありますしね。

4人のヒロインがいる形なので、千鶴ばかりに目が行かないよう敢えて少しカットしようとなったのかもしれません。

ちなみに①に関連するシーンを描いた7話『仮カノと彼女』はもっとも楽しく見た回でした。その中でも次のカットがお気に入り!!

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アニメ「彼女、お借りします」7話『仮カノと彼女』より

原作では小さなコマ割りで描かれていましたが、アニメでは二人が大きく、そして表情豊かに描かれ、とても印象に残りました。

 

そしてもうひとつ気になった点は、千鶴のセリフを一部変えてきたこと。その場面は10話『友達と彼女』のこの場面・・

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彼女、お借りします 39話より

「さっきの話なんだけどさっ」「そうは言っても無い・・だろ? 客に本気になるなんて・・」と栗林に問われ、和也から依頼された時の事を思い出すところは同じなのですが、口にした言葉が原作では「"好き”・・か」なのに対し、アニメでは「"本気”・・か」に変更されていました。原作ではスカイシップに乗った際の「さっきの話」の関連で"好き”という言葉を使い意味を持たせていたのですが、この問いに対する返しとしてこの方が自然と敢えて製作サイドは判断し変更したのでしょうね。

千鶴が和也に対する気持ちを表した部分はかなり多いので、アニメの制作サイドはその部分をどう見せるのかに注力したように感じます。おかげで千鶴の和也への気持ちをある程度ぼやかすことができたと思います。

 

他の変更されたシーンをあげてみると・・

【3巻(17話)】カット
千鶴への好意に気付いた和也が学内で千鶴をみつめてしまい咎められる。

【3巻(20話)】海水浴直後から墨と和也のデート遭遇後に変更
自宅にて麻美が和也に執着している自分を責め、「もう恋なんかしないって 決めてるんだからっ」と漏らすとともに、弟が許嫁ともとれる「あの人」の存在を示唆。

【5巻(35話)】カット
瑠夏が和也の"虚言癖”発言を問い詰めていた際に通りかかった麻美を見た和也は瑠夏を連れてその場を逃げ出す。

これを見ると千鶴以外のヒロインもほぼカットすることなく描かれていたのがわかります。

6話『彼女と彼女』から登場した瑠夏は十二分にストームガールぶりを発揮!!彼女の魅力は遺憾なく描かれていたように思います。脈拍の少ない病気とこれまでの経緯を描いた28話を7話『仮カノと彼女』のED曲で描いたのはいい方法でした。

麻美が和也に固執してしまっている自分を責める20話のシーンはカットなのかと思いきや、墨と和也のデート練習を描いた11話『真実と彼女』に挟んできました。この順番変更により35話のシーンはカットせざるを得なくなりましたが、20話のシーンを効果的な場面で描いたことで麻美の"性悪女"という印象はだいぶ薄まったように思います。

墨は最終章、11話『真実と彼女』からの登場だったせいか、7巻54話「番外編 桜沢墨かんさつにっき」を使って自己紹介がなされていました。デート練習も細かなところまで再現されていてファンの方は満足だったのではないかと思います。

 

逆に追加されたのは6話『彼女と彼女』でのダブルデート前日の一コマ。和也には栗林から「明日、運動着忘れるなよ」と連絡が入るという補足的な追加でしたが、千鶴の方は海くんからの電話連絡に「ありがとう」とお礼を言い、中野TMM劇場で行われる舞台「666の謎」のチケットがテーブルに置いてあるという当話と関係のないやりとり。これは8話『クリスマスと彼女』に海くんを登場させるためだけの伏線だったのでしょうかね・・

そして12話の「君がいいっ!! 君がっ!!」「ばーかっ」のやりとりの後にはアニメオリジナルの次のシーンが追加されていました。

① 和也とのデート写真を見て微笑む瑠夏
② レンカノデートの待ち合わせをする墨
③ 木部と和婆ちゃんのリモート会話と栗林のガールズバー来店?
④ 海くんと彼女(七菜穂?)のデート
⑤ 千鶴の友達(曜子&裕希)のカラオケ
⑥ 「青鷺姫」のパンフを見る小百合婆ちゃんと勝人爺ちゃんの遺影
⑦ 男が運転する車に同乗する麻美
⑧ 和也とレンカノデートの待ち合わせをする千鶴

個人的に注目したのは③④⑦でしょうか!?
③の木部と和婆ちゃんは「同盟相手」なのでこの会話自体はなにも違和感はないですが、11話『真実と彼女』で示したその関係性を改めて描いてきたところにいろいろ勘繰ってしまいます。18巻までにこの関係と関連するシーンはありませんが、もしかしたらアニメオリジナルでのエンドがある!?

④は原作では描かれていない彼女が登場してきたことに驚き。今後、15巻で海くんが千鶴を観劇に誘い好意を伝えるシーンがあるわけですが、これはその前振りなのでしょうか!?

⑦で同乗した車を運転していたのは誰なのか!?父にしては恰好が若いので彼氏なのでしょうか!?20話で許嫁の存在を連想するようなシーンがあったので意味深に感じました。

 

全話を見た印象は、千鶴の和也に対する気持ちの変化が比較的丁寧に表現され、二人の距離が近づくまでを綺麗に描き終わったとも言えます。

12話の最後には"2期製作決定"の告知があったので、この続きもアニメで見ることができそうですが、7巻以降は小百合婆ちゃんの余命に絡むシーンが増えるため和也と千鶴・・二人の物語の要素が強くなります。和也のクズ度も少なくなり、1期よりはしんみりとした雰囲気の描写が増えそうなので、どういう風に描かれるかは見どころです。

なお再度、12話構成で作るならある程度のシーンはカットしてアニオリ展開となる可能性も高そう・・そうなると原作ファンとしては色々思うところがあるわけですが、それでも千鶴がデレるシーンをアニメで見てみたいのも確か!もし2期が製作されるならまた楽しみに見たいと思います。

 

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