五つ葉のクローバーの超主観的考察

~恋愛マンガの名作「めぞん一刻」を皮切りにラブコメ漫画の気になった点を超わがままに考察しています!~

彼女、お借りしますの感想と考察~千鶴の恋心を言動と行動から読み取る~(16巻)

f:id:kitchan42:20200818220937j:plain

彼女、お借りします 134話より

クラウドファンディングによる資金集めと手配が終わり、撮影に入った和也と千鶴。カメラの中の千鶴を見て「住む世界が違いすぎる」とひとり落ち込む和也ですが、怪訝に思った千鶴は和也の態度を見てこう反応しました。

「私 何かした?」
「嫌うのは勝手だけどPに避けられてたんじゃやり辛いわ」

和也が目をそらすのはやましい気持ちがあるかマイナス思考になっている時・・これまでこんな態度をとる和也を何度も見ている千鶴は、巧みに自分を卑下する和也の弱音を引き出し、こう元気づけます。

「あなたと出会ったことに後悔したことなんて一度もない」

殴りたいと思ったことはいっぱいあったけど・・という言葉を添えてのこの発言は千鶴の本音が垣間見えるもの。和也の扱いはすでに手慣れたものですね。ただ元気づける意味合いが強かったため、「ある言葉」を言わないままでした。その「ある言葉」はこの後の二人きりの撮影旅行につながることになります。

f:id:kitchan42:20200818221031j:plain

彼女、お借りします 133話より

“群青の星座”のラストシーンを千鶴と二人だけで撮ってこいと監督に言われ、和也は瑠夏とみにを誘おうとしますが、そんな和也を見たみには千鶴と二人きりの一泊旅行にすべく謀略を実行。二人とも急きょ来れなくなったと知った千鶴はみにの策略と気付くわけですが、そんな状況の中でも「さくっと撮って帰っちゃいましょ」と平静を装います。

しかしその心情は全く違ったようで、向かったトイレでは頬を濡らして「まじ・・っ?」とため息。先般の海くんとの会話では和也のことを「好きじゃなくもない」と話したわけで、そんな相手と二人きりの一泊旅行には動揺せずにはいられませんよね。

そんな千鶴は車内販売の弁当を買い込んで席に向かいます。動揺していることを誤魔化すにはお弁当はナイスなアイテムでした。そんな中、皆へ感謝の言葉を口にする和也を見て千鶴は「ある言葉」を言えていなかったことに気付きます。電車を降りて言おうとするも言葉にできない千鶴。和也の前では素直になれないのが千鶴ですからね。

f:id:kitchan42:20200818221107j:plain

彼女、お借りします 135話より

斑尾観光ホテルの部屋も当然一部屋予約で和也は慌てるわけですが、そんな和也をよそに「初めてでもないでしょ」と鍵をもらい部屋に向かう千鶴。「浪費家は結婚できないわよ」という言葉は恐らく照れ隠し・・動揺はしていたはずですが、その後の下見でも部屋の中でも決してそんな様子は見せません。さすが女優ですね。

星空の下、いざ撮影という段階になって「話しておきたいことがある」と言い出した千鶴。和也が拒否すると「やだ クランクアップ前に伝えるって決めてたの」とゴネていました。和也から見て「こんなにガンコだっけ!?」と思うほどの千鶴の態度・・その理由はお爺ちゃんの存在でした。

f:id:kitchan42:20200818221205j:plain

彼女、お借りします 136話より

祖父母の事を交えて女優を目指すに至った経緯を話し、「映画撮ろうって言ってくれた時は嬉しかった」と気持ちを告げますが、本当に伝えたかったのはいい損ねていた「ある言葉」

「ありがとう」

和也はこの言葉に救われ、千鶴はこの言葉を言えたことで演技に集中する・・なかなかいい場面です。ホテルの部屋でも撮影の準備に暇がなかった和也の「俺のやりたいことだから」という言葉を聞いて頭に浮かべたのは祖父の顔。和也にお爺ちゃんを投影している部分があるのでしょうね。

千鶴が頑張れるのは祖母の存在が大きいわけですが、それは祖母経由で亡くなったお爺ちゃんに伝わると思っているからこそ。すべてはお爺ちゃんの言葉がルーツなわけです。感謝の意を伝えきることができた千鶴は撮影の中、あるお爺ちゃんの言葉を思い出していました。

「お前を支えるものは必ず現れる!!」

「前を向き夢は叶うと諦めなければ・・」に続いたこの言葉・・「願えば必ず夢は叶う」に似たニュアンスのことをお爺ちゃんはたくさん言いましたが、この言葉は初めて聞きました。諦めかけた千鶴の前に現れたのは和也・・映画を撮ろうと言ってくれてお爺ちゃんの言葉を嘘にしなかったのも和也なわけですね。だからこそ和也にいつもお爺ちゃんを投影している・・瑠夏にとって和也は心拍数が上がるオンリーワンの存在ですが、千鶴にとっても和也は夢を実現すべく現れた唯一無二の存在なのかもですね。

部屋に戻った二人は同じ部屋で眠るわけですが、疲れ以上に満足感があってかあっという間に眠りについた和也に対し、千鶴は和也が眠りについた後に起き上がり「何で私が眠れないのよっ」状態。朝風呂の中でも眠れなかったことで自分だけが和也を意識しているからのように思えてムカついている・・そんな様子がとても微笑ましい一シーンでした。

f:id:kitchan42:20200818221245j:plain

彼女、お借りします 138話より

バスの最後部席に隣同士に座り帰途につく二人。フロントの人に恋人旅行と言われたこともあってか、千鶴は「本物の彼女なんかと来るには最高かも」と意味ありげな言葉を吐きます。本物の彼女ができるまで関係を続けるとしていたこともあって和也は「状況確認」と理解したようですが、千鶴は和也の言葉を聞いてすぐに肩にもたれて眠ってしまいます。

ホテルでは眠れなかったのでここで寝るのは何もおかしくはないのですが、和也の肩を借りて眠り、起きる際も特段何も言わなかったところを見ると、瑠夏との進展状況や麻美とのその後を聞いて安心したということなのでしょう。瑠夏のことをいい子だとは認めるも恋人にすることには否定の言い回しだったし、麻美には「幸せになってほしいとは思う」なので今現在は彼女たちに好意が向いていないのは明らか。「もしかしたら墨ちゃん?」と思うもこともないでしょうしね。意味ありげな言葉を口にしたのは、自分だけ意識して眠れなかったと思いたくなくて和也の気持ちを確認したような気がします。


飯山駅で降りた二人を待ち構えていたのは、みにに白状させ二人を追いかけて来ていた瑠夏。お約束の登場の仕方で女同士との舌戦があるのかと思いきや、千鶴は言い争うこともなくあっさり姿を消していました。プロデューサーと女優と言う立ち位置が終わり、映画の完成も間近な段階なので次の登場は小百合婆ちゃん絡みになりそうですが、小百合婆ちゃんの命が上映まで持つかは物語の展開上怪しいところ。小百合婆ちゃんがこの世を旅立つとしたら、千鶴と和也の関係が変わるのは必至ですね!!

 

58話で小百合婆ちゃんは「本当の彼女を受け止めてくれる人が必ず必要になる・・」と和也に話し千鶴のことを託していました。しかし託された和也は未だ千鶴の想いに気付けてはいません。自己評価が低いので千鶴との間に一線を引いているし、千鶴への負い目もあって気づけないわけですが、このままでは彼女を受け止める存在にはなれません。

ではそんな存在になるために和也はどう変わればいいのか・・将来的には千鶴が祖母の死後も女優の夢を追い続けるのかが和也の行動の大きなポイントになりそうですが、当面は好きなのは”水原千鶴”ではなく”一ノ瀬ちづる”と認識しなおすこと、"一ノ瀬ちづる"として彼女と接することが必要だと感じます。飲みつぶれて千鶴に支えられながら家に帰ってきた73話で和也はトイレを抱えながらこう言っていました。

「一ノ瀬だけは俺が死んでも守んなきゃって」

この言葉の前後を含めいつも”水原”呼びだった和也が"一ノ瀬"呼びした貴重なこのシーン。これが素面で言えたなら二人の気持ちはひとつになるのではないでしょうか!!千鶴は和也の気持ちを知りたがっており、言葉と行動を待っている・・そんな気がします。

kitchan42.hatenablog.com

 

※本記事にて掲載されている画像は「彼女、お借りします/宮島礼吏週刊少年マガジン」より引用しております。