五つ葉のクローバーの超主観的考察

~恋愛マンガの名作「めぞん一刻」を皮切りにラブコメ漫画の気になった点を超わがままに考察しています!~

彼女、お借りしますの感想と考察~千鶴の恋心を言動と行動から読み取る~(17巻)

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彼女、お借りします 143話より

二人きりの撮影旅行から帰り、祖母の見舞いに向かった千鶴は、小百合婆ちゃんや千鶴の姿を見かけ見舞いに来た墨ちゃんに映画作りでの和也の頑張りを聞かされ、否応にも和也のことを意識させられます。

上映会の話になり和也の頑張りを称える小百合婆ちゃんに対し、「プロデューサーなんだから当然」と話す千鶴。滔々と話す千鶴の姿を見た小百合婆ちゃんは「人に愛が芽生える瞬間はいつか知ってる?」と切り出し「その人のことを楽しそうに語った時よ」と語りました。

この名言に千鶴は「そんなんじゃないって」と否定しましたが、実際はぐうの音も出ない言葉だったのではないでしょうか!?小百合婆ちゃんの最高のひと言でした。

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彼女、お借りします 144話より

童貞卒業記念パーティーをすべくやって来たみには和也に千鶴との進捗状況を聞き出そうとしますが、そのヒソヒソ話は千鶴にもしっかり聞こえていた模様。結果、みにへ釘をさすべく姿を現しますが、そんな様子を見ていた瑠夏も加わっての会話では瑠夏の"和也"呼びに絶句!!誕生祝いのプレゼントとしてもらったこの"和也"呼びにみには大慌て。千鶴は変わらず平静を装いますが実はかなり動揺した模様。部屋に戻って洗濯機の前に座り込んだ千鶴は「ただの呼び名」「普通」と自分に言い聞かせますが、そんな中漏れ出た言葉は・・

「和也」

和也の家に誕生祝いで呼ばれた86話でも小百合婆ちゃんの眠る傍で独りゴチっていましたが、今回も「は!?何 今の 馬鹿じゃないの!?」と無意識な独り言・・負けず嫌いで素直になれない千鶴の性格がよく出ていますが、これを見る限り少なくとも「ただの呼び名」でも「普通」でもありませんね。

レンカノ時は"水原千鶴"、女優時は本名の"一ノ瀬ちづる"と使い分ける千鶴だからこそ呼び名は重要。当の和也は下の名前どころか"水原"呼びなのだから尚更です。大学の女友達のように恋人ではなくとも"和也”呼びはできますが、自分はレンカノ扱いで最初に後押しした仮カノの瑠夏もいる・・せいぜい「和也さん」どまりでしかいられないわけです。

 

上映会のリハーサルに小百合婆ちゃんを招待した和也と千鶴。お婆ちゃんに映画を見せられそうと喜ぶ千鶴でしたが、そんな中、小百合婆ちゃんは千鶴にこう聞きました

「夢を見続けることに苦しんではいない?」
「祖父母のためにと義務感を抱いて無理をしてはいない」

こう聞いたのは亡き祖父に「俺が先に死んだら聞いて欲しいことがある」と言われていたから・・千鶴が女優を目指すことに祖父は「夢は叶う」と応援したのに対し、実情を知っている小百合婆ちゃんは猛反対していたんですね。ただ応援することが重荷になっているのではないかと祖父は心配していた・・

その問いに「平気よ 辛いこともたくさんあるけど」「私 夢を見るのは好きよ きっとこれからも」と答えた千鶴。その答えを聞いた小百合婆ちゃんは自分の負けだと勝人爺ちゃんに報告し、その直後に倒れこんでしまいました。もしかしたら千鶴の出演する姿を見たいがためというよりも、この勝人爺ちゃんとの約束を果たすためにここまで頑張って生きてきたのかもしれませんね。

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彼女、お借りします 146話より

小百合婆ちゃんの問いに答える際、千鶴の頭の中でよぎったのは、「一緒に映画を作るんだ!」と和也が部屋を訪れる直前、「夢は叶うだなんて言わないでよっ・・」と泣いたシーンでした。要は思い当たる節があったわけですが、そんな状況に現れた和也が映画を作ろうと言ってくれて上映会に至ろうとしている。改めて感謝の意を感じた千鶴はトイレから出てくる和也を待ち構え、視線はそらしつつ再度「ありがとう」と頬を染め告げました。本当に感謝の意しかない・・そんな気持ちが溢れた言葉でした。

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彼女、お借りします 148話より

そんな中、小百合婆ちゃんは倒れてしまい、「今夜がヤマ」と担当医に告げられてしまいます。落ち込んでいるのはアリアリなのに強がる千鶴・・俺たちの本当の関係を伝えなくていいのかと問う和也に対し、千鶴は「その話は済んだハズ」「今際の際に悲しませて何になる」とあくまで真実を伝えることを否定。「あなたを恨んで・・死ぬかも」とまで言ってしまいます。

和也が言っている通り、その言葉自体が罪悪感や後悔の「証」・・ただ言いたくない理由はそれだけではなさそう。恐らく二人の認識に決定的な違いがあり、それは『千鶴が和也のことをどう思っているのか』という部分なのでしょう。

和也は自己評価が低く千鶴に負い目もあるため自分に好意があるとは思っていません。そのため恋人関係は"嘘"=罪悪感として話していますが、千鶴は思っている以上に和也に惹かれ大事な存在と見ている・・91話で話した通りもう「ただの嘘」じゃなく、「そうなって欲しい」「嘘にしたくない」という気持ちがあるのだと感じます。

最後に千鶴は「悲しい真実なんて・・私は嫌いよ」と『悲しい真実』という言葉を使いました。「和也は嘘の彼氏」という小百合婆ちゃんから見た『悲しい真実』を意味するのはもちろんですが、続けた「私は嫌いよ」という言葉からは千鶴から見た『悲しい真実』も含まれているように感じ取れます。小百合婆ちゃんに嘘をつくことで和也との関係を維持してきた千鶴にとって真実を告げることは「関係が終わる」と同義・・千鶴にとってはこれも「悲しい真実」という事なのでしょう。

 

伝えるべきかと意見が食い違う二人ですが、では実際、小百合婆ちゃんは二人が本当の恋人関係だと思っていたのでしょうか!?

個人的には薄々でも気付いていただろうと思っています。理由は小百合婆ちゃんは”とんでもない嘘つき"と思わせるほどの天才女優だから・・その小百合婆ちゃんは千鶴のいないところで数度となく和也と話し込み、千鶴に聞かせたいような頼もしい言葉まで引き出していたのだから、少なくとも和也の言葉から嘘の存在を見抜くことはできたはず。一方の千鶴は身内なのだから"嘘"と気づくのはさらに容易でしょう。

和婆ちゃんは木部と同志でネット情報に詳しいし、麻美が和酒店のフォローをしていたこともあるので実はレンタル彼女の事までも知っているのかもしれません。千鶴は和婆ちゃんや和也の両親に"水原千鶴"と自己紹介したのだから、姓が違う理由を聞かれ、その結果ネット検索したりしてもおかしくない。祖母としても演技のレッスンに通いお金がかかるとわかっているのだから、金の工面はどうしているのかと心配するでしょうしね。

 

近く小百合婆ちゃんがあの世に旅立つのは間違いないこと。そうなったときに二人の関係はどうなるのか・・和也は「たとえ恋人でなくなっても一生支えていきたい」とまで言ったのだから千鶴の幸せのために支えていこうとするのは間違いないでしょう。問題は千鶴が女優業に今後も邁進するのかということ。以前、千鶴はこう言っていました・・

「皆、心に空いた穴を仕事とか恋人で埋めているのよ」

この格言めいた言葉の通りなら仕事に邁進しそうだし、上映会を経て女優業一本でいくのでしょうか!?それとも女優を目指し頑張れたのは祖父母に対する義務感からで祖母の死により気持ちが途切れてしまうのか・・どうであれ心の穴を埋め支えとなれるのは和也だけ・・そのためには友達レベルの「お隣さん」から一歩進んだ関係になるしかない。「恋人」関係まではなれないとしても、一ノ瀬ちづるの「親友」ポジションは最低でもゲットしたいところ・・仮カノ”瑠夏”との関係や元カノ”麻美”への気持ちに区切りをつけていくしかなさそうです。

 

※ 本記事にて掲載されている画像は「彼女、お借りします/宮島礼吏週刊少年マガジン」より引用しております。