五つ葉のクローバーの超主観的考察

~恋愛マンガの名作「めぞん一刻」を皮切りにラブコメ漫画の気になった点を超わがままに考察しています!~

彼女、お借りしますの感想と考察~千鶴の恋心を言動と行動から読み取る~(15巻)

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彼女、お借りします 127話より

停滞するクラウドファンディングによる資金集めを打開すべく、千鶴の私物による返礼、SNSによる宣伝と拡散、ビラ配りといった”203作戦”を開始した和也と千鶴。作戦の提案者であるみには早速返礼品にできる私物を確保すべく千鶴の部屋へ突撃。併せてもう一つの目的でもある和也の印象を聞き取ろうとしますが、千鶴の言葉に業を煮やしたみには「師匠は水原さんが好きっス」と口にしてしまいました。

前回も言ったとおり、素直になれない、素直になるわけにはいかない千鶴なのでみにの問いに「人として・・」と誤魔化そうとしますが、みには「師匠は水原さんのこと女としてスキなんす!!」と否定。一瞬怯んだものの、千鶴が次に話した言葉は以前確認し「好きじゃねぇよ」と言われたこと。その後も"協定"や"延長"という言葉を使い、「第一レンタル彼女に本気になるほどバカな人じゃないわ」とあくまでレンタル彼女としての立ち位置であることを主張しますが・・みには「人の気持ちはそんなに割り切れない」と引かず、次の言葉を口にします。

「お客さんの中に水原さんを一生幸せにする人がいるかもしれないっス!!」

これは以前、麻美に対し千鶴が言った言葉の再現とも言えるもの。当時は婆ちゃんたちへの説明も考えて和也に彼女を作る手助けをしようとしていたわけで、麻美の気持ちを確認し説得する中での出来事・・そんな時に放った言葉なのでこれは千鶴の恋愛観も同然。この言葉に千鶴はかなり動揺していたので、まさかこの言葉がみにの口から出て来るなんて思わなかったのでしょうね。結局最後も「好きじゃねぇよ」と和也から言われたことを盾に話を打ち切りました。

思い返すと「あなた 私のこと スキ?」と確認したのは"二人の秘密"と言う言葉を使ってスマホケースをプレゼントした後日・・客みんなにプレゼントを渡す千鶴に和也が苦言を呈した時でした。なぜ確認したのかは否定されるとわかっていても今の心地よい関係を維持するためにも確認しておきたかったと4巻②で考察しましたが、今回のやり取りを見て思うのは和也から否定の言葉を聞くことで言質を取り安心しただけではないということ・・

kitchan42.hatenablog.com

お婆ちゃんたちの事もありレンタル彼女として和也の彼女を演じてきたが、自分が背中を押す形で瑠夏という彼女ができてしまった。そんな中で確認し否定されたのだから、残念な気持ちもあったし、ずっと心に引っ掛かっていたとも言えるでしょう。そうでないとここで「第一レンタル彼女に本気になるほどバカな人じゃないわ」なんて言いませんしね。みにも言っていましたが、今は女優とプロデューサーの関係でもあり当時と状況が違うのだからレンタル彼女の立場を持ち出すのはただの逃げ口上。
その後も時折、和也の言葉に自分に想いが向けられているのでは思うことはあっても、これらのことから「そんなわけない」と自分に言い聞かせているというのが現状なのでしょう。

みにが帰った後に和也と会った際は意識してしまい素っ気ない態度を取っていましたが、部屋に戻り座り込んだ際に手にしていたのは和也の祖母から渡されている指輪でした。みにに物色されたりからかわれたりしないよう確保していたのですね。いずれこの指輪は大きな意味を成すのでしょう。

 

SNSでのRTを海くんに依頼した千鶴は和也とみにに観劇に誘われたことを報告。引き留めようとする和也をみには遮り、「肉を斬らせて骨を断つ」方向に決定するわけですが・・待ち合わせの中、思い返していたのはRTの代わりに付き合うのかと和也に問われた場面。あきれてはいたものの実は言って欲しい言葉だったのかもですね。好きな人に気にかけてもらうのは嬉しいことですから!!

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彼女、お借りします 125話より

そして海くんとの観劇はというと・・海くんが千鶴を誘ったのは彼女が風邪引いたからではなかった模様。その彼女と1週間前に別れたとなるとそれはSNS拡散を依頼し観劇の約束をした日の出来事!?となると和也の提案でクラウドファンディングによる映画作りをしていることを聞いたことが別れるに至った原因とも考えられます。遠回しながらも終始意味深な発言を連発していたのは好意を持って千鶴の気持ちを探っていたからなのでしょう。

海くんから「どんな人?」と問われたことに対し、初めは「不思議な人」だったのに最後は”できると言ってくれる人”として「大事だと思える人」と説明。どこまでの答えを求めていたのかわかりませんが、自分の気持ちを添えての言葉に海くんもなすすべなし。みにとの会話では「別にいい人だとは思うわ」と話していた千鶴なので気の知れた海くん相手に無意識に出た言葉だったのでしょうね。

その結果、最後は「好きなの?その彼の事」「ちづるちゃんの好きな人なの?」とド直球勝負!!その理由は千鶴を見ていると”好きみたいだから・・”でした。

そりゃそうです。瑠夏も麻美もみにも総じてそう感じているのだから百戦錬磨そうな海くんが気付かないわけはなし。海くんの問いに千鶴が絞り出した答えは・・

「好きじゃない・・」
「でも・・好きじゃなくもない」

日本語の難しさを実感する相反したこれらの言葉・・消極的な表現ですが、あるかないかといえば”ある"という意味なので言葉を選んだうえで本心を言ったと言えそう。
ただ「借り物から始まる恋」を説くみにの言葉が和也の前に頭をかすめているのを見ると、レンタル彼女の存在でしかない水原千鶴の立場では「好きじゃない・・」で、女優を目指す一ノ瀬ちづるは「好きじゃなくもない」と使い分けたのかもしれませんね。もしかしたら逆かもしれませんが、海くんには一ノ瀬ちづるとして接し、今回彼の好意を本気と感じたわけだからここでは誠意を持って一ノ瀬ちづるとして「好きじゃなくもない」と言ったと感じます。

海くんには比較的素直に心境を吐露していたわけですが、答えを誤魔化したのはやっぱり和也との関係を壊したくないからなのでしょう。和也は好意があるとバレると今の関係が終わるような発言をみにとの会話でしていましたが、理由はもっと複雑にしろ千鶴も認めてしまうことで関係が変わることを危惧しています。もっと簡単に考えればいいと思うのですが、双方とも割り切れない性格だからこそ今の関係にまでに発展しているわけですしね。

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彼女、お借りします 126話・127話より

ビラ配りに戻った千鶴は「普通の観劇よ。言ったでしょ ただの代役だって」と和也に嘘をつきました。「実は海くんに好意を示され食事にも誘われた」とは言えるはずもなくやむを得ないところではありますが、隠そうとしたのは和也に余計な心配をかけたくなかったから!?それとも「好きじゃなくもない」と言ったことを知られたくなかったから!?どちらにしろ和也を意識しまくりの状況なのは間違いなし。

千鶴が和也を好きなのは読者なら皆わかっているわけですが、海くんは追うことも声をかけることもしなかったところを見ると千鶴の言葉を聞き確信を得たのでしょう。和也の千鶴に対する気持ちはクリスマス時に気付いたはずなので両想いであることまで認識可能。宣伝RT時の「馬鹿だな 僕も・・」発言から考えるに、こうなることをわかったうえで観劇に誘い、好意を示すことで千鶴の本心を引き出し、気持ちの後押しをしたようにも思えます。
ちなみにこのやりとりは和也が未来から振り返るような書き方をしていたので、もしかしたら和也と海くんの接触が今後あるのかもですね。自分にできなかったことを成し遂げた和也に興味を持ってでしょうか!?それとも映画鑑賞に来る形でしょうか・・

 

※本記事にて掲載されている画像は「彼女、お借りします/宮島礼吏週刊少年マガジン」より引用しております。