五つ葉のクローバーの超主観的考察

~恋愛マンガの名作「めぞん一刻」を皮切りにラブコメ漫画の気になった点を超わがままに考察しています!~

彼女、お借りしますの感想と考察~千鶴の恋心を言動と行動から読み取る~(19巻②)

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彼女、お借りします 162話より

かに道楽ではお婆ちゃんに連れられた幼い孫娘と遭遇してしまい、祖母を亡くした寂しさを実感してしまいました。すぐに仮面をつけなおしたところはさすがでしたが、祖母&祖父との思い出でもあった花火ではとうとう我慢できず・・こんな思い出があるなんて和也は当然知らないわけで彼に落ち度はなし。和也のデートプランは千鶴の嗜好をよく理解してのものであり、千鶴も十分に気晴らしになったと思いますしね。

震える千鶴の背中を見て「初めから水原の力にはなれないとわかっていた」と結論付け、客とレンタル彼女という関係の限界を知る和也・・そんな中で千鶴を『支える』ためにできることとして選んだのは、自分の『理想の彼女』を語ること・・それも明らかに千鶴の事だとわかる言葉をかけることでした。

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彼女、お借りします 164話より

結果、和也の胸に飛び込み泣き叫んだわけですが、そんな千鶴を前に和也は抱きしめることはしませんでした。

「客だからって我慢できるほど・・」とあるので和也にとって客とレンタル彼女という関係を超えたものだったのは明らか。愛おしいとまで思ったのに抱きしめることができなかったのはなぜでしょう!?理由として考えられるのは次のとおり・・

① 瑠夏との関係があるから
② 小百合婆ちゃんとの約束があるから
③ 泣くのを邪魔したくなかったから
④ 「好きだ」と伝えていないから
⑤ 千鶴の気持ちがわからないから

カノカリは関連する回想を差し込む事が多いことを考えると①②は直接関係しないでしょう。③についても次の日に「まさかあんなに泣くとは・・」と話しているのでそこまでの心の余裕があったとは思えません。

好意が無くてもこんな風に胸に飛び込まれたら抱きしめるのが道理・・と考えると好意があるからこそ抱きしめられなかったとも考えられますが、翌日に「抱きしめるのが正解だったのかも!!」「それくらいを望んでいたのかもーっ!!」と言うぐらいだから深い考えがあってのことではない・・この場面で和也は過去を振り返る口調でこう言っています・・

「あの時なんで自分がそんな事を言ったのか」
「未だに分からない」

この言葉を見る限り、好意めいた言葉をかけたと認識しているのは確かであり、そうなると④の可能性も低いですね。

思い返せば海くんとの観劇デート後、ビラ配りに千鶴が合流した時にも過去を振り返るようなセリフがありました。

「これがこの日 起こったこと」
「当時の俺は裏での出来事などつゆ知らず」

この言葉からわかることは、後に和也の知ることとなったということ。今後、千鶴の「好きじゃなくもない」発言を聞いた海くんと和也が話をする機会があるとしたら・・やっぱり千鶴の気持ちがわからなくて抱きしめることができなかったというのが一番の理由でしょう。

全てを知る読者から見るともっと強引に行けば!?とも思いますが、祖母の死に落ち込み泣きじゃくる中で、相手の気持ちもわからないまま自分の気持ちをぶつけるわけにはいかなかった。だから無意識ながらも言葉を選び、胸を貸すだけにとどめた・・とも言えます。後にきちんと気持ちを伝えあえばいいわけですからね。

結局、その後は何があったわけでもなく、落ち着きを取り戻した千鶴は「じゃ またっ」と笑顔で帰って行った模様。そんな千鶴の心中が読めないと話したり、今更ながら千鶴への「好き」な気持ちが鮮明になったと話すのだから和也はどうかしていますよね。この期に及んで千鶴の気持ちがわからない事を理由に引き寄せようともしないのだから・・つまりただのヘタレ!!レンカノのルールだとしてもここは「今日は一緒に帰ろう」と言っても良かった場面でしょう。たとえ泣いた跡を見られたくないと断られたとしても・・

 

今回のデートは和也なりに頑張った最高のデートプランだったとは思います。意図しない形でしたが、花火をしたことにより千鶴に号泣させてあげられたわけですからね。和也の胸で泣いたこともあって翌日の千鶴はその話題に触れたくない感じがアリアリでしたが、和也の声掛けに「はい」と答えるなど素直な反応を見せていました。

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彼女、お借りします 166話より

祖父母の遺影の前で『和也のレンタル彼女』だったことを話していたところを見るとすっかり立ち直った感じ。続けて和也との出会いや印象を口にしているのをみると小百合婆ちゃんの143話での名言「人に愛が芽生える瞬間は・・その人のことを楽しそうに語った時よ」を意識してのことだったのでしょう。つまりこれは「和也のことが好き」という祖父母への報告・・・そして注目すべきはこれらの言葉・・

「でも不思議ね」
「それまでは寂しくて寂しくて」
「死んじゃうかと思ってたのに」
「なんだか人前で泣いたらすっきりしちゃった」
「あーあ 変なのっ」

照れもあって『人前』という言葉を使っていますが、和也の前だったからこその言葉なのは明らか!”理想の彼女”いう『芝居がかった言葉』で好意を示してくれたことにより、小百合婆ちゃんを介した繋がりだけではなかったと確認できたわけです。やっぱり和也との関係を懸念し不安な気持ちが強くなっていたのだろうと思います。

 

ただ和也の言葉や認識を見ると千鶴との距離が近まったと思えないのが正直なところ。和也の言葉は『一ノ瀬ちづる』に向けたものと思ったからこそ、千鶴は和也の胸に飛び込んだのですが、好意の対象でもある和也に抱きしめてもらえなかったことに千鶴はどう感じたのでしょうね!?きっと後になって『ヘタレ』と思うんでしょうね。

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彼女、お借りします 163話より

このまま二人の関係はとんとん拍子に進みそうにも思えますが、前にも述べたように「あの時なんで自分がそんな事を言ったのか」「未だに分からない」は未来で後悔しているともとれる言葉・・花火後に千鶴が「これなら本当の彼女ができる日も近いかもっ」と口にしたのを見ても、2人は一度距離を取る形になるのだろうと感じます。『夢を叶えるために』という前向きな事も含めて・・

千鶴の気持ちがわからないのは和也が踏み込んで行かないから・・千鶴は気持ちを明言することはなくとも色々なサインを送っているわけで、二人の行く末は和也の気付きと自信、そして度量次第・・

そう考えるとみにに「次は普通にデートに誘ってみるっス」と言われ「あくまで俺と水原は客とレンカノだからムリ」と返す和也では進展は望めそうにないですね。いつになったら千鶴と対等になれるのか・・みにの言うとおり本当に世話のかかる主人公です(笑)

 

※ 本記事にて掲載されている画像は「彼女、お借りします/宮島礼吏週刊少年マガジン」より引用しております。