五つ葉のクローバーの超主観的考察

~恋愛マンガの名作「めぞん一刻」を皮切りにラブコメ漫画の気になった点を超わがままに考察しています!~

彼女、お借りしますの感想と考察~千鶴の恋心を言動と行動から読み取る~(19巻①)

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彼女、お借りします 158話より

千鶴の気持ちを理解すべく墨ちゃんをレンタルした結果、10時間レンタルをしての"水原励ましデート”を決行することにした和也。そんな和也に千鶴はレンタル彼女"水原千鶴"として振舞うわけですが、なぜかそれまでとは違う行動をとっていました。

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彼女、お借りします 158・159話より

① 和也くん呼び
本日のお代、6万7千円を払ってすぐに千鶴が口にしたのは「和也君」という呼び方でした。和也も思わず口にした彼女モードの呼び方は2回目のデート以来・・他の人がいる時は「和也さん」、お隣さんの一ノ瀬ちづるの時は「あなた」だったので和也がそう思うのも当然の事でした。

② デート早々の手繋ぎ
和也も動揺したデート早々からの手繋ぎ・・これまでは希望すればデート途中でも手を繋ぐことはできましたが、千鶴の基本スタイルはデートの終わり・・別れ際に行うものでした。なのに買った秋物服を着た直後、デート開始早々から手を繋ごうとし、映画館では手を重ね2時間も恋人繋ぎしていました。

③ ストレッチによる身体的接触

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彼女、お借りします 161話より

ボルダリング前に自ら和也と組んでのストレッチ・・レンカノタイムなので少々の身体的接触があっても不思議はないわけですが、いつもなら和也の反応に「勘違いしないで!」と言ってあれこれ理由をつけるのに、何も言わずに恋人然としていました。

栗林とのデートでは「駿君」と呼んでいたので「〇〇君」呼び自体おかしくはないのですが、見舞いのための1時間レンタルが始まった1巻4話以降は二人のデートシーンが少なく、名前を呼ぶ機会もなかったのでかなり違和感があります。

「いつも通りの水原が理想」とのデート発注をした7巻56話でも元々「和也さん」呼びだったし、10巻78話での制服デートでは待ち合わせに名前も呼ばずに「どもっ」のみですしね。和也の祖母や両親とは家族ぐるみの付き合いもあって「和也さん」呼びが読者から見るとデフォルトになってしまっていた感じです。

ただこのシーンに違和感があった最大の理由は、和也が「なんだよその"彼女モード”」と言ったのに対し、「あははっ」と笑うだけだったから・・56話での発注を思い出したのか、その後は素の対応をしていますが、無理している感がありありで違和感を覚えずにはいられません。

恐らくですが、和也の理想である”いつも通りの水原“を振舞おうとするもできなかったのでしょうね。”いつも通りの水原”とは要するに”一ノ瀬ちづる”ですからね。和也の方が歳はひとつ上ですが、いつもの話しぶりはタメ口以下だったこともあって一層こうなってしまったと予想します。

その後、自ら率先して手を繋いだりストレッチを組んだりしたのを見ると、精神的に不安定な状態が見て取れます。その原因は小百合婆ちゃんの死により身寄りのものが居なくなったことが大きいわけですが、そのことだけで千鶴の気持ちが不安定になっているかと言えばそうではない・・

恐らく千鶴は和也との関係性を懸念しているのでしょう。二人の関係を色々な意味で繋いでいたのは「別れるって言いたくない」「レンカノの事がバレるのは本当に困る」「私が銀幕に立っている姿を見せたい」と千鶴が話していた相手・・小百合婆ちゃんでした。

「嘘」と「夢」の対象が亡くなった今、千鶴側から和也を引き留める術はなくなったわけで今後の関係は和也の気持ちひとつ。和也の気持ちに薄々気づいてはいるものの、瑠夏や麻美がいて自分はレンタル彼女のまま。映画製作も上映会を残すだけで関係がこれ以上深まることはないのだから不安になって当然でしょう。だからこそいつもと違う行為をし、彼女なりのサインを送る形となっていた。


ランチ時には病室で小百合婆ちゃんに映画を見せられたことについて感謝の意を述べた千鶴ですが、本人も語っていたようにできればレンタル彼女時以外に伝えたかった感じ。和也にお世話になったのは「水原千鶴」ではなく「一ノ瀬ちづる」なのだからレンカノ"水原千鶴"の状態で感謝の意を伝えるのはおかしいですからね。それでも敢えてここで感謝の意を伝えたのも和也へ確認したいことがあるから。そしてランチ後にはこのように語っていました。

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彼女、お借りします 160話より


「だからね」
「あなたにはもう十分してもらったと思ってるの」
「あなたがいなきゃ映画は作れなかったし」
「これ以上は悪いって」

和也の「俺がしたいんだ・・っ」「水原は付いてきてくれればそれでいい・・っ」という返しに千鶴は「まっ彼氏にそう言われたら仕方ないかな!」と笑顔で返しました。リアクションを見る限り、和也の言葉は想定内!!そう言わせたような感じさえしますが、嬉しかったのは間違いなし。

ただよくよく千鶴の言葉を見ると、今回のデートの事だけを言っているわけではないのかもしれませんね。つまり、反応次第で和也との関係に区切りをつけることも考えている・・ただこの時の表情を見る限り、まだ決断をしているようには見えません。どちらかというと和也の気持ちを探っている感じ。

来週には上映会があるので、なにか一波乱あるならそれ以降でしょうか!?展開的に見ていずれ千鶴は和也と距離を置こうとするのだろうと思います。その理由は祖父と約束した「女優になるために」であり、そのためには誰かに依存せず強い自分であらねば!と千鶴は考えるだろうから・・ 

ただその理由はあくまで後付けであり逃げ口上の一つでしかない。以前の考察で「皆、心に空いた穴を仕事とか恋人で埋めているのよ」という言葉を取り上げましたが、要は穴を埋めるのは仕事じゃなく恋人でもいいわけです。本心では「一緒にいたい・・いてほしい」という思いがあるからこそいつもと違った和也が喜びそうな行動を取るわけで、和也の反応次第で距離感を決めようとしているのだと感じます。

 

※ 本記事にて掲載されている画像は「彼女、お借りします/宮島礼吏週刊少年マガジン」より引用しております。