五つ葉のクローバーの超主観的考察

~恋愛マンガの名作「めぞん一刻」を皮切りにラブコメ漫画の気になった点を超わがままに考察しています!~

アニメ「とらドラ!」の感想 ~恋の共同戦線を張る二人が惹かれ合っていく王道のラブコメディ~

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竹宮ゆゆこ/アスキー・メディアワークス/「とらドラ!」製作委員会 BDラベルより引用

2008年10月~2009年3月に放映された竹宮ゆゆこ氏のライトノベルが原作のこの作品。今となればかなり古めの作画ですが恋愛ラブコメしては最高とも思える傑作でした。

お互いの親友に恋する高須竜児と逢坂大河が恋愛成就に向けて共同戦線を張ることから始まったこの物語・・前半はアプローチ合戦でラブコメ全開ですが、後半は竜児への恋心を隠して親友の櫛枝実乃梨との恋を応援する大河の切ないラブストーリーとなっており胸を打ちます。最後は大河と竜児がハッピーエンドを迎える王道のラブコメディで私は大のお気に入りです。

以下、ネタバレ要素を多分に含みますのでご注意ください。

【あらすじ】
学業優秀も父親譲りの目つきからヤンキーに見られてしまうことを気にしている高須竜児は高校2年に進級し、親友の北村祐作、以前より好意を寄せていた櫛枝実乃梨、そして櫛枝の親友である一人の少女と同じクラスになる。彼女の名は逢坂大河。低身長で美少女ながら短気でわがまま、暴れ始めたら止められないことから"手乗りタイガー"の愛称を持つ大河だが、ある日の放課後、北村宛のラブレターを竜児のカバンに間違って入れてしまう。そのことを知られたくない大河は自宅マンションの隣のアパートにある高須家を襲撃するが、封筒に手紙を入れ忘れていたこともあって和解に至り、「お互いの恋を応援する共同戦線」を張ることになる。

一人暮らしの大河は高須家に入り浸り状態になる中、二人はお互いの思いを寄せる相手に色々なアプローチを仕掛け気持ちを伝えようとするが結果は伴わず、逆に「二人は付き合っている」と噂が広がってしまう。そのことを気にした大河は北村に告白することで共同戦線という関係を白紙に戻そうとするが、北村から友達宣言された大河に竜児は「竜として大河の傍らに居続ける」と「虎と竜」に例えた言葉をかける。

その後、転校してきた北村の幼なじみでモデルの川嶋亜美とは犬猿の仲だったが、ストーカー問題の解決を契機に素を見せるようになった亜美と徐々に打ち解けていく。

竜児への好意が芽生えるもその気持ちは隠して竜児と実乃梨の恋の成就に向けて頑張る大河だったが、クリスマスパーティの夜、大河のマンションを訪れた実乃梨に竜児の名を呼びながら泣き叫ぶ様子を見られてしまう。一方、竜児は修学旅行中、スキー場で遭難し意識のない大河から自分に対する気持ちを聞いてしまう。

本心を知った実乃梨は北村、亜美と協力して大河を問い詰める。直視できずに逃げ出した大河を追う竜児・・大河を好きだと自覚した竜児はプロポーズまがいの告白をし二人は・・

 

【好きな点】
ドジでツンデレな大河と家事全般得意で世話焼きの竜児・・お互いの恋を応援する共同戦線の結果は、付き合っていると誤解されたりしながらお互いに必要な存在となっていく・・というよくあるパターンではあるのですが、櫛枝実乃梨川嶋亜美、北村祐作と相手を思いやれる仲間との恋愛模様はとても優しく、そして切なく心に染み渡ります。2話「竜児と大河」で北村に振られた大河にかけた「竜虎並び立つ宣言」時点で初泣きでした。

どこがいいかと一言で言うのは難しいのですが、見直してみると大河と竜児二人のセリフが秀逸なことに気付きます。「アベック」や「エッチ スケッチ ワンタッチ」などかなり昔に流行った言葉やギャグが使われたりしますが、次に挙げた3つのように竜児への気持ちが爆発する際の大河のセリフは感情がストレートに伝わってきて泣けてしまいます。

①プールでクラスメイトとぶつかり溺れかけた竜児を誰も助けようとしないことに「竜児は私のだ~誰も触るんじゃない~!」と叫ぶ(8話 だれのため)

②実乃梨のいるクリスマスパーティへ向かうよう追い返したものの「竜児のそばに居るのは私じゃない・・それが嫌なんだ」とマンションの外へ駆け出し、名前を連呼しながら泣き叫んでしまう(19話 聖夜祭)

③スキー場で遭難し意識朦朧とする中、救助に来た竜児を北村と勘違いし「ダメだよ全然・・どうしたって竜児の事が・・好きなんだもん」と竜児への想いを口にしてしまう(21話 どうしたって)


そして竜児の優しさが大河を包み込む様がとてもいい・・父はいないものの母”泰子”の愛を十二分に受けて育った竜児に対し、大河は父親から金と住むところだけを与えられ家族の愛に飢えている・・だから「うちは3人家族なんだから!!」と泰子に言われたことを喜ぶし竜児の優しさにもとても弱い。竜児がそばに居て心の支えになっていたからこそ大河は北村にふられても父から再度裏切られても落ち込まずにいられた・・この竜児の設定がこの物語を肝であり見ていて優しい気持ちになれる要因だと感じます。

 

そして忘れてならないのが作品を彩るOP&ED曲。特に17話以降のオープニング「silky Heart」とエンディング「オレンジ」は秀逸・・この2つの歌詞を見ればヒロインそれぞれの心情がわかるようにできており、フルで歌えるレベルで好きでした。

 

実乃梨も実は竜児に好意を持っていたわけですが、親友である大河の気持ちに気付き、罪悪感から自分の気持ちを隠そうとする・・一方、亜美も自分を大人扱いしない竜児に惹かれるわけですが、好意を向けられるも煮え切れない態度の実乃梨に嫌悪を抱いた結果、大河の気持ちを優先し自分の気持ちは伝えずじまい・・この二人の心理戦を含めたバトルはちょっとした見ものです。全く振り向いてもらえず気持ちのやり場のない亜美が実乃梨や竜児をけしかけ嫌味を言うところもいい塩梅のスパイスになっている感じです。

関係性で見ると後半は大河、実乃梨、亜美3人の好意はすべて竜児に向けられた四角関係なわけですが、実乃梨と亜美は竜児の心の奥底に大河がいることに気付いていたこともあって必要以上にギスギスすることはありませんでした。各々が葛藤と苦悩を抱えつつも相手を思いやる優しい気持ちに溢れているので見ていて重たくもない。大河の気持ちが自分に向けられていることに竜児が気付かないからこその関係性で予定調和の結果で終わりますが、竹宮先生ならではの細やかな感情描写と王道展開だからこその名作だと思います。