めぞん一刻を考察して⑤~二階堂くん登場の意義~
第78話「いっしょに住もうね」から第84話「スクランブル・キッド」まで中心となって登場した二階堂くん。なんか唐突に登場し一刻館で騒動を巻き起こします。アニメでは一切カットになるなどなぜ登場したのかわからないという意見が多いようです。なぜ二階堂くんを登場させる必要があったのでしょうか?実は二階堂くんの登場は今後のストーリー展開に大きく影響しています。
①第80話「仲よき事は」までは主に四谷さんと二階堂くんが騒動をおこす話ですが、まず一刻館内で騒動を起こし、管理人さんに手をやかせるような状況を作り出す必要がありました。
第84話「スクランブル・キッド」で響子さん、三鷹さん、一の瀬さんがテニスコートでこんな話をしています。
三鷹:「音無さん、この頃おかしいですよ」「テニスクラブには来ないし、たまにお誘いしてもなかなかOKしてくださらない」
響子:「はあ・・いろいろありまして」
三鷹:「ぼくのどこがいけないのでしょう」
響子:「いえ、三鷹さんがどーとかいうわけじゃ・・」
一の瀬:「一刻館に新しく入ったのが問題児でさー、管理人さん大変なんだよ」
一の瀬さんの言葉で響子さんは二階堂くんが問題児でバタバタしていたから、誘われてもなかなかOKできなかったんだなと思ってしまいます。こう思わせることがポイントです。
そう思わせることでその後も響子さんは三鷹さんとの付き合いを継続していると勝手に思って読んでしまいます。でも五代くんのことならいざ知らず、響子さんが二階堂くんの騒動があったという理由だけで三鷹さんの誘いまで断るでしょうか。響子さんも二階堂くんの騒動として返事をしていません。誘いを断る理由は一つしかありません。そう、響子さんは五代のことを「好き」と認識したことで三鷹さんと距離を置こうとしていた。これをごまかそうとしたのだと思います。
②第81話「雨に濡れても」~第83話「なんでもありません」は一刻館を訪れたこずえちゃんに二階堂くんが応対したことで響子さんと五代くんの間をかき回す話です。
第67話「落ちていくのも」から第77話「春の墓」で響子さんは五代のことを「好き」と認識し、結婚のことまで考えるようになっており、このままでは響子さんの気持ちは五代に決まったと思って読むことになります。そこで響子さんにちょっと足を止めさせる必要がありました。公園で響子さんが五代を頭に浮かべ独白するシーンがあります。
五代:「こずえちゃんと別れたら、本っ当にぼくのものになってくれるんでしょうね」
響子:「なんでそうなるのよ」「そんなこと・・五代さんがこずえさんと別れてからの話だわ・・」
そう、この言葉を思わせることで響子さんにこずえちゃんの存在を強く意識させ、五代に対しすぐには素直になれない状況を作ろうとしたのです。
ここを五代くんとケンカしているからいつものように言っただけと思って読めば、今後も響子さんは惣一郎さんへの想いから素直になれないと思って読んでいくし、本音が出たと思えばこずえちゃんの存在から素直になれないと読んでいくことになります。
この2つで第101話「大安仏滅」~第107話「閉じられた扉」まで響子さん、五代くん、三鷹さんの三角関係が続いているとしていろいろな読み方ができるようになったのです。
第80話「仲よき事は」までは四谷さんと争うような過激なキャラクターですが、第81話「雨に濡れても」以降はニブい奴として二階堂くんは登場しています。
ふたりの関係を察することができない二階堂くんがこずえちゃんを五代の恋人と思い込んだことでこずえちゃんに「五代さんがヤキモチやいて二階堂さんと付き合うなって言うんだもん」と言わせ、ケンカのわけを聞きに行くことで響子さんに「なんでそうなるのよ」「そんなこと・・五代さんがこずえさんと別れてからの話だわ・・」と思わせています。このニブい役割ができるのは一刻館の住民にはいません。そのためどうしても新しい入居者が必要だった・・二階堂くんが登場した意義をそう思っています。