五つ葉のクローバーの超主観的考察

~恋愛マンガの名作「めぞん一刻」を皮切りにラブコメ漫画の気になった点を超わがままに考察しています!~

めぞん一刻を考察して②~響子さんは面倒くさい、イヤな女?~

五代くんを好きなのに三鷹と付き合い両天秤にかけている、好きなのに手も握らせない、好きなのに好きと言わないでヤキモチを妬くことからそう思うのでしょうが、なぜ響子さんはこのようなことをしていたのでしょうか?ほかの誰かを好きになったら惣一郎さんへの思いはウソになるから・・そんなイメージですが実際は一刻館に来てから惣一郎さんへの想いで悲しむシーンは「春のワサビ」「惣一郎の影」ぐらいで「春の墓」での涙は精神的な惣一郎さんとの決別のためです。五代のことを「好き」と認識した骨折事件以降は特に現実の世界に目を向けています。原因は何でしょう?

①こずえちゃんの存在

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めぞん一刻 83話より

「なんでもありません」で「こずえちゃんと別れたら、本っ当にぼくのものになってくれるんでしょうね」と五代がいう姿を思い浮かべ「なんでそうなるのよ」「そんなこと・・五代さんがこずえさんと別れてからの話だわ・・」と独白するシーンがあります。

そう、骨折事件で「好き」と気づいた響子さんですが五代にはこずえちゃんという公認の恋人がいます。響子さんが公認の恋人になるには五代がこずえちゃんと別れてもらうしかない。響子さんは恋愛に関して独占欲がかなり強い性格です。早くこずえちゃんと別れてほしいと思っていました。しかし「ラブホテル事情」でふたりが別れたと聞き、五代が自分のことを話したのかどうかを気にするなど、顔見知りでもあるこずえちゃんに五代を奪ったと思われたくはない気持ちもありました。響子さんにとって素直に「好き」と言える状況ではなかったのです。

 

②惣一郎さんへの想い
①の結果、響子さんはふたりが別れるまで「五代さんが私のことを好き」「五代さんから結婚申し込まれたら結婚してもいい」など自分が好きなのではないと本当の気持ちをごまかそうとします。

第90話「パジャマとネグリジェ」に響子さんの気持ちを裏付けるシーンがあります。「仕方ない、これだけは言いたくなかったけど・・」と思ったあげくに的外れの答えをし、八神に「で先輩は?」と聞かれ慌てる始末でした。

八神:「本当は五代先生のこと好きなんだ」・・・以下省略

響子:「五代さんはね・・私のことが好きなんです」

八神:「それで・・?」

響子:「え・・?」

八神:「先輩はどうなんです?」

響子:「えっ・・わ、私は・・」「私は別に・・」

ただ「五代を好きになったら惣一郎さんへの想いがウソになる」という想いは当然あったのでしょうが、「夢一夜」まではあくまで「五代さんが私のことを好き」と思い込むための理由付けにしていたように思えます。

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めぞん一刻 82話より

ちなみに「五代さんが私のことを好き」という言葉は「好きと言って欲しい」という願望からくるものです。「雨に濡れても」でこずえちゃんが登場し、「神経過微」で五代がこずえちゃんにヤキモチを妬いたことで響子さんは少し冷静にならざるをえなくなりました。

五代がこずえちゃんと別れないと「公認の恋人」になれないとわかり、自分から素直に「好き」と言えないことは悟りました。でも「宴会謝絶」「愛の骨格」「がんばってくださいね」で自分は好きな気持ちを伝えたのに五代は何も言ってくれない。

ふたりの間で確かなものがないことへの不安そして寂しさが募り「好きと言って欲しい」「結婚したいと言って欲しい」という願望が高まっていくのですが、その後も五代が何も言ってくれないことにいつしか「五代さんは私のことが好きなの」と自分の中で思い込もうとしたのです。そして対外的にも自分ではなく五代さんが・・とごまかすようになったのです。

 

③自分が年上で未亡人であること
全編中、5回「私は未亡人だから・・」的な言葉を言っています。響子さんは自分が未亡人であることを気にしています。未亡人でかつ年上であるがゆえに自分から「好き」と言うことには当然ためらいもあったのです。

 

④五代の将来への思い
骨折事件後まもなく五代は大学4年生になり、第85話「青田枯れ」にあるように遅ればせながらも就職活動に入りました。よいところに就職できるよう専念させたいという気持ちもあったでしょう。

響子さんは惣一郎さんにベタ惚れで結婚したように、もともとは好きになったらまっしぐらの人です。おまけに「SOPPO」では寂しがり「雪に二文字」では「スキンシップに弱いのよね」と言っているぐらいですから、普通なら好きな人に手もつながせないはずはないのです。

ふたりの間に確かなものがないことに第150話「好きだから・・・」では「無理してつっぱってないで・・体をあわせれば楽になれるかしら」と考え、第151話「好きなのに・・・」では「なんだか・・意地を張りすぎて疲れちゃった・・」と響子さんは言っています。惣一郎さんへの想いから素直になれかったのなら「無理して・・」「意地を張りすぎて」という言葉はおかしいのです。もっと現実的な問題だったのです。

本当は素直に好きと言いたい、手をつなぎたい、抱きしめて欲しいと思っているのに、こずえちゃんという公認の恋人がいるから・・略奪愛と思われたくないから・・自分が抑えきれなくなるから・・ほか②③④もあって響子さんは五代くんに好きということも手をつなぐこともできなかった・・素直になることを許されず、無理につっぱっていくしかなかったのです。

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めぞん一刻 134話より

もうひとつ、三鷹さんと付き合いを続けていたことですが、三鷹さんに対して「好き」という気持ちは全くありません。なのに付き合っていたのには理由があります。これもこずえちゃんの存在です。五代がこずえちゃんと別れるまで三鷹さんとの関係を維持することが自分の中で必要だったのです。

これは響子さんが五代に対しよくやる手法でこずえちゃんがパンジーをあげたら自分もゼラニウム、セーターをあげたらのちのちにセーター、キスしたら自分もキスなど同じやり方で対抗します。三鷹さんとの関係維持もこの考え方で五代がこずえちゃんと付き合っているからなのです。

ただ骨折事件以降、響子さんが三鷹さんとデートしたのは作中「バラ色の人生」「発覚」の2回です(大安仏滅は見合いの結果報告として整理)。ひとつは五代の就職が決まりほっとしている状況、もうひとつは三鷹さんの強引な誘いです。ほかにふたりきりで会っているシーンとしてテニススクール帰りのお茶が浮かびますが、骨折事件以降一度もありません。

実は「スクランブル・キッド」で三鷹さんが「音無さん、この頃おかしいですよ」「・・・たまにお誘いしてもなかなかOKしてくださらない」という場面があります。響子さんは五代に「好き」という感情を抱いて以降、三鷹さんとの距離をこれまでより置き、自分の中では二股にならないようにはしていたのです。

しかしプロポーズまでしてくれている三鷹さんの気持ちを利用しようとしていたことは否定できません。「朝まで眠れない」で三鷹さんにすべてを見透かされていたことに泣きながら謝っていますから響子さん自身もこのことを相当気にはしていたのでしょう。

響子さんは多分恋愛に対し不器用なんでしょう。好きになりすぎてその人しか見えなくなりかけ引きができない。これを面倒くさいと思う人は面倒くさい女だろうし、イヤと思う人はイヤな女になるのですが、このように見ていくと少し見方が変わってくると思います。

 

 ※本記事にて掲載されている画像は「めぞん一刻高橋留美子小学館」より引用しております。