めぞん一刻を読み返して(7巻)
■■ 第67話 落ちていくのも
こずえからもらった手編みのセーターを着て帰ってきた五代へ「なにもこそこそ隠すことないのに」と言ってしまう響子。この言葉に初めて怒りを爆発させた五代は屋根の修理をしていた響子と言い合いに。屋根から足を滑らせ雨どいにぶら下がる状態なのに意地を張って助けを求めない響子に五代は「何で助けてくれと言わなかったんだ」と頬を叩く。しかしその五代は2階から落ちて骨折してしまい・・
【解説及び感想】
手編みのセーターをそのまま来て帰ったらダメでしょう五代くん。響子さんがヒステリー起こすのはわかっているんだから・・もともと別れ話を切り出すつもりだったからセーターをもらったことで考えが回らなかったのですね。「セーターは思いをつむぐもの」だったから。
こずえちゃんの夕食のお誘いに甘えてばかり、本人が自覚したとおり響子さんの前でだらしないことばかりしている五代くんなのに、寒い中でも掃除して待っている響子さんの気持ちは・・?
「重大な話ってプロポーズかも・・」と一の瀬さんに言われ焦り、「相変わらず五代くんいじめてるんだろ」と言われ否定しないところを見ると喧嘩する前から五代に対する気持ちがだいぶ高まっている様子です。
※ 五代が響子さんを怒った唯一のシーン。頬を叩かれて「だ・・だって・・」とつぶやく響子さん。手編みのセーターを着て帰ってきたということは五代が自分には気を使わず、こずえちゃんに気を使ったということ。それが響子さんにはたまらなく寂しく悔しかった・・そう怒りではなく寂しさ・・結果として強いヤキモチとして現れたのでしょう。その前に一の瀬さんから「プロポーズかも・・」とも聞いていましたしね。
■■ 第68話 宴会謝絶
五代に嫌われたと思いなかなか見舞いに行けない響子。やっと見舞いに行き「もう絶対 ヤキモチ妬いたりしません」などと言ったものの、数日後にはこずえの手編みのセーターを持っていき「目をそらしちゃいけない」「罰を受けなくちゃいけないから・・」などと告げ五代とキスしそうになる。
【解説及び感想】
「あたし嫌われたんです」「五代さんだってきっとあたしの顔なんか見たくないと思います」と話す響子さん。う~ん、一の瀬さんの言うとおり、本当に持って回った考え方です(笑)
でもこの時は意地張って五代に怒られたことや「あたしがこずえちゃんとのことを妬いたりしなければ五代が骨折することはなかった」との思いから「嫌われたのでは」と思ったのでしょう。
病室で響子さんと五代くんが交わした会話は一度読んだだけではなかなかよくわからないのですが、見舞い初日の「もう絶対ヤキモチを妬かない」は「こうなったのはヤキモチを妬いたことが原因。嫌われたくないから、もうヤキモチを妬かない」という気持ちからでしょう。
見舞いで嫌われたわけではないと思った響子さんはふと自分がヤキモチを妬いたと言っていることに気づき、五代に対する自分の気持ちを考えたのだと思います。ヤキモチを妬いたということは五代のことを好きと言っているようなものですからね。
つまり「それから、目をそらしちゃいけないと・・」は「自分の本当の気持ちから目をそらしちゃいけない」という決意の言葉です。
「それにヤキモチを妬いたから・・こういった事態に陥ったわけで・・」「そのセーターはヤキモチの罰で・・」「そう罰なんですわ・・あたしは・・罰を受けなくちゃいけないから・・」は「あたしには五代さんへの本当の気持ちが別にあって・・そのセーターにヤキモチを妬いたから、こういった事態に陥ったわけで、そのセーターは本当の気持ちから目をそらしていた罰で、そう・・あたしは目をそらしていたことへの罰を受けなくちゃいけないから」と言いたかったのでしょう。
本当は持ってきたくないこのセーターを持ってきたことが自分への罰・・こずえちゃんへの恋敵(ライバル)宣言なのかもしれません。
「あたし・・きっと」に続く言葉は本当の気持ち・・「五代さんが好きなんだと思う」
※ 全編を見てこの見舞いの間が、響子さんが五代くんのことをどう思っているのかを一番考えたように思います。その結果、「好き」と自覚したのです。
■■ 第69話 駆け落ちクラッカー
世話に来ているいとこの晶が五代のことを好きなのではと響子は疑うものの誤解。彼との駆け落ちを考えている晶に一刻館の住民は手助けするもののその最中、五代が病院の階段から落ち再骨折する羽目に。
【解説及び感想】
いとこにまでヤキモチ妬くなんて、もう少し落ち着いて響子さん(笑)一の瀬さんから「いとこ同士って結婚できるんだ・・」と言われ、慌てて見舞いに行くところを見ると五代くんに関係した「結婚」「プロポーズ」という言葉に敏感です。
晶の「結婚だって・・できるわ・・」という言葉に「五代に気があるのでは」と考え、優柔不断な五代を思い浮かべる響子さん。「あれは一時の気の迷いだったのよ」と素直じゃない響子さんらしさが戻ってきました。
■■ 第70話 愛の骨格
再骨折後は世話したいと意思を示し、三鷹がこずえを連れて来ても「私がお世話したい」と告げる響子さん。元旦の朝、散歩に出かけたふたり。「こうしている方が私・・」と告げた響子は五代と抱擁、そしてキスしそうになるも・・
【解説及び感想】
住人にからかわれ、三鷹さんが言ったように一時の感情なのかと考えてみるも答えが出ない。でもこずえちゃんの「あたしが面倒見る」と言う言葉に「五代さんのお世話は私が・・」と告げた響子さん。初めてこずえちゃん(恋敵)に対抗しました。この前後の病室でのシーンを見比べてみると響子さんの表情も態度も全然違いますし、この対抗した瞬間が五代を好きなんだという自分の気持ちに確信を持ったときなのかもしれません。
「こうしている方が私・・」は好きな人のお世話をできることが何より嬉しいという気持ちが強く現れています。「あぶないわ」と抱擁する際の響子さんの姿は自分の気持ちをひとつひとつ確かめているようです。
■■ 第71話 雪に二文字
三鷹がわざと怪我して五代のとなりのベッドに入院。三鷹は響子と五代の様子を見て何かあったと察し、響子を言葉巧みに抱きしめる。気持ちに迷いが出る響子。しかし、三鷹には女子大テニス同好会の女子大生、五代にはこずえが世話をするとやってきて断らないふたりにヤキモチ爆発。
【解説及び感想】
抱きしめられた時を思い返し「気の迷いじゃなかった・・本当にどうなってもいいって・・」と五代の洗濯パジャマを握り締めながら思いにふけり、病室では五代と目を合わせて微笑みあい気持ちを確かめる響子さん。「好き」という気持ちを自分の中で認めた優しい顔です。
一方、その様子を敏感に感じ取った三鷹さん。スマートかつ言葉巧みに響子さんの気持ちを確かめる手腕はさすがです。会話の中で五代くんの「僕の場合はちゃーんと開けてくれた」に対し、三鷹さんは「ドアの隙間からちょっとのぞいてくれた」。少し差がついたことを感じ取っています。逆転できる差とは思っていますが・・。
三鷹さんに抱きしめられた時を思い出し迷いがでるものの、三鷹さんには女子大生、五代くんにはこずえちゃんが世話をしにやってきて、どちらも断らない姿にヤキモチを妬きすねて帰ってしまった響子さん。一の瀬さんの「そろそろ決着つけてやったら?」という言葉が頭をかすめ、選ぶ行動をしなくてはいけないんだと思ったのですね。好きと認めても五代を選ぶとは言えませんからね。こずえちゃんがいる限り・・・
※ 「スキンシップに弱い」と自覚している響子さん。今後も五代くんに手を握らせようとはしません。スキンシップをしてしまったら自分が抑えられなくなるからでしょうか?
■■ 第72話 愛のリハビリテーション
「せめて帰ってきたら、いたわってあげよう」と退院した五代を迎えるもこずえが付き添ってきたことにヤキモチを妬く響子。三鷹も女子大生たちが世話していることが分かりさらに不機嫌に・・。病院で会った三鷹と五代は響子のヤキモチの理不尽さに意気投合し飲むことに。
【解説及び感想】
「もう妬かないって決心してたのに・・だめねーあたしって・・」「せめて帰ってきたら、いたわってあげよう」と思う響子さん。五代くんの顔を見てニコッとする優しい顔を見ると、帰ってからヤキモチ妬いて帰ってしまったことに後悔したんでしょうね。本当はこずえちゃんが来ても「私が世話をする」と言うつもりだったのですね。
でも付き添ってついて来たこずえちゃんに対抗することなく5号室から聞こえるふたりの声に不機嫌になる響子さん。自分がしたかったのにという気持ちがそうさせています。まだまだ素直になれません。
ちょっと前に心が通じ合ったはずの響子さんから「五代さんにばっかりかまっている暇はないんですっ」と言われた五代くん、辛いですね・・・一の瀬さんの言葉に響子さんムカっとしてしまいました。
※ 5号室から聞こえる五代とこずえの声を聞き不機嫌な顔をした後、三鷹さんの様子見に・・と言う場面があります。今後の三鷹さんの立場を象徴するシーンです。
■■ 第73話 がんばってくださいね
骨折騒動で五代が留年の危機と坂本に聞かされ私のせいと思った響子は、夜食を作るなど五代の試験勉強の世話を申し出る。最終日の試験が朝早いことから起こすと約束するも住民との宴会で響子は寝坊し結果大遅刻。試験を受けられず、追試もないことを知って留年かと落ち込む五代に響子から思いがけない言葉が・・
【解説及び感想】
留年危機に「私のせい」と責任を感じる響子さん。同時に退院したらいたわってあげようと考えていたもののできなかったことで何か五代くんの役に立ちたいと思っていたようです。夜食のホットサンドを切るときのご機嫌な響子さんの顔。好きな人の世話をしているという優しい顔です。
いきなりの「1年くらい・・1年くらい私待ちますから・・」発言はびっくりです。
第31話「三年待って」で書いたように、「あと三年 三年は管理人やっていて欲しい」と言った五代の言葉を覚え、そして理解していたからこその言葉です。気持ちが追い込まれて出た言葉ですが、五代と結婚しても構わないという気持ちが湧いて出た一瞬でした。
でも試験時間が違っていたと分かり呆然とする響子さん。言ってしまったものはどうしようもなかったでしょうが、本当に恥ずかしかったでしょうね。「もう知らないからっ」は可愛すぎます。
※ 惣一郎さんの時を見ても、響子さんは好きになったらすぐ結婚まで考える人のようです。