めぞん一刻を考察して⑦~八神さんの五代先生への想い~

最初は「かげりじゃなくて単に暗いのよ」と言っていたのに資料室で卒業アルバムに涙ぐむ五代を見て「きっと・・恋人が死んだんだわ。彼女はここの卒業生で、それでどこかかげりがあるのね」と勘違いからはじまった五代への恋でした。約1年と3ヶ月という期間のうちに4回登場しています。
①第87話「VS.乙女」~第92話「ロング・グッドバイ」(1984年9月)

初めて一刻館を訪れたときに目の前で洗濯したワイシャツを五代に渡すなど響子さんの挑発然とした行動に「負けられない」という気持ちから響子さんの本心を探ろうとしました。同級生から冷やかされ一過性の熱病のようなものと思いこもうとするも五代の去っていく姿を見て涙を流してしまいました。「恋に恋する少女」ではなく本当に五代先生が好きなんだと認識しました。
②第94話「振り袖コネクション」(1985年1月)~第98話「恩讐の彼方」(1985年3月)
前回から約3ヵ月後、初詣で振り袖を見せたいと五代に会いに来た八神さん。その際、父が人事部長をしている三友商事を受けると聞き、就職を支援するための顔つなぎ、それがうまくいかなかったら一刻館へ籠城してまで父と対決しました。響子さんに直接対抗するのではなく「ただ愛するひとの役に立ちたい・・」その一心です。
③第101話「大安仏滅」(1985年4月)
高校三年生になった八神さん。就職先が倒産したことを謝りに来たとともに、こずえちゃんが「あたし平気よ」と言ったことに対抗して「あたしだって二年たったら二十歳だもん。ちょうどいいわ。」と自分も五代が保父の資格を取るまで待つという気持ちを表しました。
④第112話「秋の罠」(1985年9月)~第114話「窓辺のスニーカー」(1985年10月)
五代の写真を見て会いたくなりバイト先の保育園を訪れたことから家庭教師の先生と生徒として近づくことになりました。「五代先生はあたしの精神安定剤・・」「一緒にいて、同じ空気吸って・・今はそれだけでいいの・・・」とにかく五代と一緒の時間を過ごしたいという気持ちからの行動でした。
⑤第115話「キック・オフ」(1985年11月)~第117話「弱虫」(1985年12月)

担任に告げ口したことから響子さんと徹底抗戦を誓い、五代から響子さんを排除しよう、好きと言わせようとするも、担任の言葉に響子さんの五代への思いの強さを感じとり身を引きました。
①「好き」②「就職の役に立ちたい」③「就職まで待ちたい」④「一緒にいたい」の行動。好きだったら当然の行動ですが、八神さんは短期間のうちにやってのけています。お母さんが言ったように「思い込みが激しい」八神さんにとってこれは当然の行動プロセスなのかもしれません。
そんな八神さんなのに最後は「弱虫」と響子さんに叫んで退場してしまいました。あっさり身を引いたことになぜ?という意見も多いようです。
八神さんは五代の気持ちはわかっていたし、響子さんに敵わないことはわかっていました。でも五代が好きだからこそ、幸せになって欲しいからこそ、素直に「好き」だと言わない響子さんにがまんならず言った言葉は「あたしに負けるのがこわいんでしょ」「いくじなし」「見栄っぱり」「弱虫」。
でも担任の「もし誰かを新しく好きになったら、だんなさんへの思いはウソだったってことになる・・」という言葉に「それじゃ・・だんなさんと同じくらい五代先生のこと好きなわけ」と気づきました。そして昨夜の響子さんの言葉を思い出し「やっぱりこの前言いすぎたかな。気にしてたら後味悪いな。元気づけてやろうか」と思ってしまいした。
「嫌いだな、そういう思い込み。要するに勇気がないんじゃない」と自分は思ったのに「じゃあ、あたしが絶対好きと言わせなくちゃ!!」ではなく同情の言葉を思い浮かべたのです。
響子さんの五代への想いの強さがわかったうえで同情、つまり響子さんの気持ちを理解できてしまったのだから、もう真っ向張り合うどころか入り込む余地さえない・・この時点で八神さんは自分の負けを認め、身を引くしかありませんでした。
でも最後の意地を見せたい。最後に五代先生のためにできること・・今の響子さんに託す言葉・・それが「弱虫」と言って響子さんを激励し、背中を押してやることでした。
響子さんはこの言葉に「惣一郎への想いが真実だったのなら今の五代に対する想いも真実」と思いました。八神さんのことを「ただの何しでかすかわからない娘」ぐらいにしか思っていなかったのなら「弱虫」と言われてそう思うことはありません。
響子さんは最低でも茶々丸でやりあって以降、八神さんのことをもうひとりの自分として見ていたのでしょう。惣一郎さんだけを見つめ人目も気にせず気持ちを表していた高校時代の自分を・・
体育用具室の一件を含めこれだけ積極的な八神さんでも五代に対し一度も「好き」と言いませんでした。「好き」と言ったらこの関係は終わってしまう」というより「振り袖コネクション」以降は響子さんに対抗して「私も五代先生の役に立ちたい」という気持ちが強く、その信念に向けてまっしぐらだったように思えます。「好き」と言うのは響子さんの役目、言わないなら私が五代先生を奪い取るから・・と思ってた・・そんな気がします。
最終話「P.S.一刻館」で女子大に入学した八神さんが友達からの合コンの誘いをパスし、「まだ五代先生から卒業できない」と思うシーンがあります。女子大は父の強い勧めなのか自分から目指したのか?「思い込みが激しい」彼女ですから響子さんと同じで恋愛に不器用な面もあるのでしょう。当面は五代くんのようなタイプの大学の講師とでもめぐり合い好きになっていくのかな・・・・・