五つ葉のクローバーの超主観的考察

~恋愛マンガの名作「めぞん一刻」を皮切りにラブコメ漫画の気になった点を超わがままに考察しています!~

めぞん一刻を読み返して(11巻)

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めぞん一刻 107話 及び 110話より

■■ 第107話 閉じられた扉
ふたりが抱き合う姿を見てしまった五代は坂本の家に身を寄せショックから立ち直れない。「きっと誤解している」と思った響子は坂本の家に電話し五代に帰ってくるように伝えてもらう。帰ってきた五代に響子は誤解をとこうとするが「もうあなたのこと・・なんとも思っていませんから・・」と言われ傷つき泣いてしまう。

【解説及び感想】
5号室の扉をはさんで話すふたり。まったくかみ合いません。五代くんは響子さんに心配かけまいと強がって「もうあきらめましたから」「もうあなたのこと・・なんとも思っていませんから・・」と言ったのですが、響子さんには訳がわかりません。

そう、五代くんはふたりの抱き合う姿を見て響子さんが三鷹のプロポーズを受けたと考えているのに対し、響子さんは自分が三鷹のプロポーズを受ける素振りさえしていなかったと思っており、単に抱き合った姿を見られたことに対する弁解をしようとしていただけなのです。「あきらめるって・・あんなことくらいで・・・」と思っているぐらいですから。

廊下での会話のなかでも響子さんは「あたしが(そばに)いなくても、大丈夫なんですね・・?」と聞いたのに対し、五代くんは「(三鷹さんと結婚して)あたしが、いなくなっても大丈夫・・?」と理解し「だ・・大丈夫です」と答えます。日本語は難しいですね。でも響子さんが流した一筋の涙がふたりを引き止めました。

※ これまでの響子さんなら「もうあきらめましたから」「もうあなたのこと・・なんとも思っていませんから・・」と言われたら、「何でそんなこと言うの・・いい加減にして・・私は・・」とでも言いそうな感じですよね。追い込まれると本音が出てくる人ですから・・

この言葉は響子さんにとって一番聞きたくない言葉だったということが一番ですが、第100話「桜迷路」で、五代に対する自分の気持ちが通じたと思っていたのにそれが違ったこと。また第104話「とっても好きだよ」で「およめさんにしてあげられないんだ」とテープで聞かされたこともあったからかもしれません。

※ こずえちゃんは今後第143話「戸惑いロマンス」まで出てきません。

 

■■ 第108話 二人の旅立ち
三鷹からきた手紙の「しばらくお会い出来なくなる」との文面に「こっちにも・・あきらめられちゃったのかな」と落ち込む響子。そんななか音無家から旅行クーポン券もらったことから旅行に行くことを決心する。涙のわけがわからない五代は坂本から「そりゃ、おまえ惚れられてんだろ」と言われ、管理人室に貼ってあった日程表をつかみ、旅行に出た響子を追った。

【解説及び感想】
なぜ泣いてるのかわからないと言う自分に惣一郎さんから「バカ」と言われる夢を見て目を覚ます響子さん。夢を見るぐらいですから自分の本当の気持ちをごまかすために行動していたことを後悔しているんですね。そのせいで、五代を失うことになってしまったと・・。

三鷹さんからの手紙を読んで「あきらめられちゃったのかな」と誤解する響子さんですが、「こっちにも・・」という言葉はなんか三鷹さんかわいそう。響子さんの態度は淡々としています。

この時が響子さんの気持ちをグッと引き寄せるチャンスだったのですが、犬恐怖症を克服する特訓に入りしばらく会わないと伝えてしまった三鷹さん。今後もずっと犬に恋路を邪魔されます。

「ひとり者・・か」「本当に・・一人になっちゃったのかな」と思う響子さん。これは好きな人と別れた時に感じること。惣一郎さんを想う気持ちでは埋めきれない・・満たされない心があるということですよね。

乗り込んだ電車の中、向かいの席に座っているカップルを見て「やっぱりひとりはさみしい」と思うものの「三鷹さんのことも・・五代さんのことも・・きっぱり忘れよう」と決心する響子さん。三鷹の方を先に忘れるの?と思ってしまいますが(笑)

この時は「自分には惣一郎さんがいるんだからひとりじゃない、ふたりのことは忘れてしまえばいい。たいしたことじゃない・・」と自分に言い聞かせています。

金沢行きの列車の中、ふたりが背中合わせで座っているシーンは二人のいまの関係を示しているのでしょうか?ちょっと振り向いてちょっと話せばわかりあえる距離・・

三鷹さんのことではどんなに悩んでも惣一郎さんが出てきませんが、五代くんのことでは惣一郎さんが出てきます。おまけに今回は惣一郎さんが夢に出てきたことで墓参りまでしています。第77話「春の墓」で五代の存在を伝えてますからね。それぐらい五代くんと三鷹さんでは「好き」の意味合いが違ったのです。夢の中で「バカ」という惣一郎さん。そう、響子さんの中の惣一郎さんはもうひとりの自分なのです。

 

■■ 第109話 同行二人
金沢を観光する響子、そして響子を探し回る五代。響子は途中会った女性から旅行している理由を聞くうちに五代のことを思い出し追いかけてくる五代の姿を思い浮かべてしまう。輪島行きのバス休憩の砂浜で五代の姿を見つけるものの幻と思い・・

【解説及び感想】
お約束のすれ違いで会うまで至らないふたり。予定表をドアに貼ってきたことを思い出し、五代が追ってくる姿を思い浮かべてしまったことに「バカ。なにムシのいいこと考えてんのよ」と思う響子さん。五代のことをまた思い出してしまいました。「ムシのいいこと・・」なんです(笑)

 

■■ 第110話 シルエット・ロマンス
砂浜で見た五代の姿を思い出し、「こんなとこにいるわけないのに・・」と思う響子。近くに温泉があることを聞き、急遽行き先を変えた響子を追ってしらみつぶしに旅館をあたる五代。見つけきれなかった五代は響子が泊まっている旅館に泊まることに。露天風呂につかる五代。響子さんも露天風呂に行きふたりは・・

【解説及び感想】
「明日は東京・・か」「みんなどうせ元気だろうけど」と露天風呂で思った瞬間、「少しでも追っかけてきてほしかったのかな・・」「だからあんなに五代さんの幻ばかり・・」と独白する響子さん。第108話「二人の旅立ち」で「五代さんのことも・・きっぱり忘れよう」と決心したものの、それは本心ではなく現実逃避しているだけ。本当は五代に追っかけてきてほしかったんだと気づきます。そしてこうも思ったでしょう・・

『 (今すぐ)会いたい 』

明日になれば否応なく会えるのですが、このままでは一刻館でどういう顔をすればいいかわからないですしね。次話までの3日間の失恋劇になるわけですが、響子さんの想いの強さや性格からもこの3日以降に傷心状態になるのは目に見えていますから、本当に良かったですね。

 

■■ 第111話 夢一夜
露天風呂で顔を合わせびっくりするふたり。しかし五代はのぼせてしまい響子の部屋へ運び込まれる。五代の寝姿を見て「どうしてここにいるの・・偶然?」「あたしを追って・・追ってきてくれたの・・?」と思う響子。目が覚めた五代は追ってきたと言えずじまい。ふたりは本当のことが言えないまま時間だけが過ぎていくが・・

【解説及び感想】
「追ってきれくれたの?」も「追ってきたんです!」も口にできないふたり。涙のわけを知りたいと追ってきた五代くんなのに会えて満足したわけではないでしょうが・・。

五代の偶然を装う言葉に「そうね・・やっぱり偶然・・」「少し残念・・」と思うものの「本当よ・・会えてとっても」「どうしたんだろ。なんだかホッとする・・」と五代に会えた嬉しさと同時に一緒にいるだけで感じる気持ちに気づきました。一緒にいてホッとするという感情・・・・。

響子さんはこの時こう思ったのだと思います。「五代さんとなら結婚してもいい」じゃない、私は「五代さんと結婚したい」んだと。

今日行った先まで同じだったことに「本当は追ってきてくれたんじゃないの?」「もしそうならあたし・・」と独白する響子さん。「もしそうならあたし・・」のあとの言葉はなんでしょう?もう、五代に対する気持ちをごまかしきれない。これまで言えなかった言葉「好き」と言ってしまおうと。

「明日は輪島にでも・・」とでまかせを言った五代に対し「いいですねえ。あたしも行きたいな」という響子さん。くしゃみをしたことを気遣い肩に丹前をかけながら「よかったら一緒に・・明日も」と誘う五代くん。そして顔をみつめたあげく「はい」と答える響子さん。これだけでふたりはわかりあえました。

結局、追ってきたとは聞けなかった響子さんですが、一刻館に戻って日程表がないのに気づき、五代が追ってきたことを知ったであろうことは言うまでもありません。

※ 響子さんにとってはこずえちゃんの存在もあり、自分が「好き」と思うことも「結婚したい」と思うことも惣一郎さんに対する背任行為としてごまかしていたのですが、この出来事を契機に響子さんは五代に対してきちんと向き合って行こうと考え始めます。

響子さん自身について、まず一つ目は三鷹との付き合いをやめてしまおう、もう一つは惣一郎さんを忘れようです。五代に対しては、まず一つ目がこれまで以上に支えていこう、もう一つは「好き」と気持ちを伝えようです。

※ 響子さんの肩に丹前をかけ手を置く五代くん。響子さんに触ったのは第80話「仲良き事は」で手を握って以来1年3ヶ月ぶり。キス未遂は第70話「愛の骨格」以来1年半ぶりでした。

 

■■ 第112話 秋の罠
久しぶりに五代の顔を見たくなった八神はバイト先の保育園を訪ね、五代が家庭教師の生徒を募集していることを知る。自分を生徒として推薦するも対象は小学校高学年ぐらいまでと断られた八神は、友達の弟を使って自分の家庭教師を五代に引き受けさせる。

【解説及び感想】
「また八神さんとご縁ができたんですか?」と警戒する響子さん。前回、苦労が絶えませんでしたからね。でも「やっぱりご縁ができちゃったわね・・」五代が断りきれないことをよく理解しています。

 

■■ 第113話 チャート式恋愛
まんまと八神の罠にかかり家庭教師をするはめになった五代とイライラが募る響子。響子を気にしておどおどする五代の態度に環境が悪いと思った八神は、最後の1回は自分の家でと提案する。八神の家に来た五代だが、両親とも結婚式のお呼ばれで遅くなると聞かされドギマギ。しかしその父たちが早く帰ってきて・・。

【解説及び感想】
家庭教師初日の夜、「結局、八神さんのペースに乗せられてるんだから」と不満げに外で八神を待つ響子さん。前回子供が来ると思っていた時は掃除してませんので今回は八神が言うとおり門番です(笑)

「(家庭教師は)どうせ今月だけなんだから?」と尋ね、五代に「は、はい それはもちろん」と言わせるところもさすがです。

しかし八神の方が数枚上手。目の届かないところにふたりが行くことに響子さんの心配はつきません。八神を「なにするかわからない娘」と思っていますからね。

 

■■ 第114話 窓辺のスニーカー
五代の家庭教師を受けていることを父に隠していた八神は、父が帰ってきたことに驚き五代をクローゼットに隠まう。五代のスニーカーを取りに行き、父に気づかれないよう窓から帰そうとする八神だが五代は慌ててしまい・・。

【解説及び感想】
一の瀬さんと話すうちに「よく、あのお父さんが五代さんの家庭教師許可したわね」と思った響子さん。ニブイですね。でもこの時は果物を剥くときも平常心です。気持ちを落ち着かせたい時は果物を剥く響子さんです。でも帰ってくるまで心配はつきませんけどね。

 

■■ 第115話 キック・オフ
裸足で帰ってきたことに何かあったのではと心配するも五代から真相と「これで縁が切れた」と聞き安心する響子。しかし、スニーカーを持って一刻館に来た八神は四谷さんを家庭教師にすることを思いつく。八神の身を心配した響子と五代が四谷の部屋を覗いたことにより結局五代の部屋で家庭教師をすることに。辛抱たまらなくなった響子は学校の担任に告げ口するが、逆に八神の心に火をつけることに・・

【解説及び感想】
担任に告げ口するとは・・・もう八神を「五代に近づけさせない」となりふり構わずの響子さんです。

 

■■ 第116話 めまい
告げ口に徹底抗戦を誓った八神は成績を上げて五代の家庭教師に文句を言わせないようとする。成績があがった八神は響子を具体的に排除しようとお茶とお菓子を用意し差し入れを拒否する。にらみ合うふたりだが、八神に「本当は五代のことを好きなんでしょ」と問い詰められ、その場から逃げる響子。それを追う五代に響子は・・

【解説及び感想】
「惣一郎さんにむらがってくる恋敵なんて、ただのひとりもいなかったし・・」と考えたことに、「恋敵・・冗談じゃないわ。何であたしが・・」と強がるものの、八神に「・・本当は五代先生のこと好きなんでしょ」と問い詰められ答えきれない響子さん。でもその場から逃げた自分を追ってきた五代に「高校生相手に・・ムキになってはりあっちゃって・・」と本音が出てしまいました。

「まだまだ・・かな」と思う最後のシーン。五代に気持ちを伝えたいのだけど、まだ勇気がないのです。

 

■■ 第117話 弱虫
五代のくたびれたセーターを見た響子はクリスマスパーティーでセーターをプレゼントしようとするも八神も来ていたため不機嫌に。はっきりしない態度に「好きなら好きってはっきり言いなさいよ」と言う八神に対し、響子は自分の気持ちを吐露する。担任から響子の一途さと考え方を聞き、昨夜の言葉を思い返した八神は一刻館に向かい・・

【解説及び感想】
「私に負けるのがこわいんでしょ・・いくじなし 見栄っ張り 弱虫」と八神に言われ、「当たってなくはないわねえ。だって私こわいもの」「恋に破れるのがこわいんじゃない。このままじゃみんなウソになりそうで・・こわい・・」と答える響子さん。

「・・もし誰かを新しく好きになったら、だんなさんへの思いはウソだったってことになる・・」と八神に話す担任の先生。よくわかっていますね。五代に気持ちを伝えたいと考えているものの、この思いもあるためなかなか言えなかったのです。

遅れてやってきた五代に「きゃー五代先生」と抱きつく八神を見つめ、茶々丸からの帰り道、揃って歩く五代と八神の後ろ姿に「あなたはいいわよね八神さん だって・・まだひとりしか好きになったことないんでしょ」と独白する響子さん。自分に素直な行動をする八神を羨ましく思った、そういう表情です。「まだひとりしか」ということは、自分はひとりじゃないということだから・・

担任の言葉を聞き、「だんなさんと同じくらい五代のことが好きなんだ」とわかった八神。言いすぎた、元気づけようかと思うものの響子の顔を見て出た言葉は「弱虫」。

響子さんにとっては、ごまかしてきた自分を吹っ切る手助けになりました。惣一郎への想いが真実だったのなら今の五代に対する想いも真実だと・・。八神は五代ではなく響子さんを魂の牢獄から救ったのです。

※ 響子さんが言った意味と八神が受け取った意味は違うのかもしれません。

八神が「このままじゃみんなウソになりそうで・・こわい・・」の部分を思い出し、「だんなさんと同じくらい五代のことが好きなわけ」と思うシーンがあるため、「五代を好きになってしまったことで惣一郎さんへの想いがウソになりそうで・・こわい」と読んでしまいます。

しかし、響子さんは「このまま自分が気持ちを伝えないことで惣一郎さんへの想いだけでなく五代への想いもみんなウソになりそうで・・こわい・・」と考えたのかもしれません?

響子さんは現実逃避しているときは、惣一郎さんの想いがウソになるのが怖いのですが、現実では五代にふられることが一番怖いのです。

※ 八神が出てくるのはこれが最後でした。八神は五代の気持ちはわかっていましたし、響子に敵わないこともわかっていました。八神は五代が好きだからこそ、幸せになって欲しいからこそ、はっきりしない態度の響子にがまんならなかった。でも担任の言葉を聞いて昨晩の響子の言葉に五代に対する思いの強さを確認できたと思ったから身を引いたのでしょう。響子に同情の気持ちも持ってしまいましたからね。ふたりの間に入り込む余地はない・・もう会うのが怖い・・とも思ったのかもしれません。「弱虫」という言葉を残したのは最後の意地です。

※ セーターをプレゼントしようとした響子さん。これまで第49話「なんて器用なの」でゼラニウム、第99話「バラ色の人生」でネクタイをプレゼントしたことがありますが、ゼラニウムは嫌味で渡したもの、ネクタイは就職祝いでした。でも今回はクリスマスプレゼントでセーターをあげようとしており、これまでとは意味合いが違います。結局、五代に渡せたのかわかりませんが・・

なお第67話「落ちていくのも」でごずえちゃんがセーターをあげましたが、響子さんもセーターなのです(笑)

 

  ※本記事にて掲載されている画像は「めぞん一刻高橋留美子小学館」より引用しております。