五つ葉のクローバーの超主観的考察

~恋愛マンガの名作「めぞん一刻」を皮切りにラブコメ漫画の気になった点を超わがままに考察しています!~

めぞん一刻を読み返して(15巻)

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めぞん一刻 153話 及び 161話より

■■ 第152話 本当のこと
ホテル代の立替えに呼び出されただけと知ったこずえはキャバレーに行き五代に誤解していたことを謝る。帰りの歩道橋の上、泣き出したこずえに「もう付き合えない、ほかに好きなひとがいる」と本当のことを語る五代。信じてやれず結婚を決めたことで五代に嫌われたくなかったと話すこずえ。わかり合えたふたりは最後の別れを・・

【解説及び感想】
「あたしのこと嫌いにならないで」と泣き出したこずえちゃんに本当のことを話した五代。五代を信じてやれず結婚を決めてしまったことにこずえちゃん心を痛めたんですね。

「へんな別れ方するのいやだったから お別れしても嫌われたくなかったし・」は五代を好きだったし大事に思っていた証の言葉・・「だけどっ・・おあいこねっ」と笑うこずえちゃんには泣けてしまいます。

結婚する相手のことを「本当にあたしのこと好きでいてくれるみたい・・だからあたし、そのひとを信じられると思う・・」と話すこずえちゃん。これから愛情を深めていくんですよね。

さよならと言った後に立ち止まり、「ねえ、五代さんの好きな人って、どんな人なの?」と問うものの「待って、やっぱりいい・・」と答えをさえぎりました。五代との思い出を美しいままで終わりたかったのです・・・知っている人だと嫌だから・・

※ 第101話「大安仏滅」からなかなか登場しなかったこずえちゃん。すっかり大人びての登場でした。第101話では保父資格を取るのに2年ぐらいかかることに「あたし平気よ 二年くらい」と言っていましたし、第148話「やましい関係」での「あたしがついていないと五代さん」という言葉を見ても五代のことを本当に好きだったと感じ取れます。そう五代は初恋の人に似ており自分から五代に近づいたんですものね。

※ こずえちゃんは五代の好きな人が響子と気づいたのでしょうか?こずえちゃんがニブいのは確かですが、第50話「こずえちゃん気をつけて」では友達に言われてではあるものの五代の態度が普通じゃないと感じたことがあります。第143話「戸惑いロマンス」を見ると最近はたまにしかあっておらず、五代がキャバレーに住み込んでいることさえ知りませんでした。こずえちゃんは、五代の態度にプロポーズしてくれる気があったなんて思わなかったと話しています。「自分は愛されていない」「他に好きな人がいる」と思っていたのでしょう。

デートで響子さんの話をしたのは第16話「桃色電話」第20話「影を背負いて」第107話「閉じられた扉」があり、第107話では五代の様子を見て「本当はちょっぴり管理人さんにあこがれていたんじゃないの?」と言うシーンがあります。五代を「好き」だったこずえちゃんなら動揺する五代の様子に「管理人さんのことを好きなのかも?」と感じ取っていたのかもしれません。今話でも「誰?」と聞かれて五代くんは動揺していますから・・

 

■■ 第153話 契り
バイトから帰るなり響子から「ショックでした。とても悲しかった」と言われ、「惣一郎さんのことで頭がいっぱいになって・・」と弁解する五代。ふたりは管理人室で気持ちを伝え合うものの、いまだ「惣一郎の影」に怯える五代にどうすればいいかわからない響子。「抱いてくださいって私の方からお願いしなくちゃ・・」との響子の言葉に五代は・・・

【解説及び感想】
帰るなり「ショックでした。とても悲しかった」と言われてしまった五代くん。でもこのおかげでふたりはお互いの惣一郎さんに対する気持ちを伝え合うことができました。

響子さんが言った「惣一郎さんを消すことなんて・・できるはずないのかもしれません」という言葉。やっぱり五代との結婚に向けて忘れようと考え、そして苦しんでいたんですね。

最後は響子さんの言葉で五代くんは「惣一郎の影」を振り切り、抱き合うことでやっとふたりの間に確かなものができました。

ふたりで迎えた初めての朝、「あたしね・・ずっと言えなかったことが、あるんです」「本当はね・・」「ずっと前から五代さんのこと好きだったの」とやっと「好き」と言えた響子さん。五代くんにとっては待ち望んだ言葉でした。「ずっと前っていつから?」の問いに「忘れちゃった!」こんなこと言われたら男はイチコロです(笑)でも聞きたいでしょうねー五代くん。

※ 「惣一郎さんを消すことなんて・・できるはずないのかもしれません」という言葉で話を切り出す響子さん。響子さんは五代が「惣一郎の影」に苦しんでいることに気づき、どうすればいいか悩んでいたんです。「おれのできること、おれのやり方で・・違うしあわせを響子さんにあげたい・・」とやっとのことで話す五代に対し「それでいいじゃありませんか」「あたし同じものが欲しいなんて思っていません」「あなたは惣一郎さんのかわりなんかじゃ・・」と答える響子さん。この言葉は響子さんが五代にしてあげられる精一杯の言葉でした。

それでも「でもおれ・・響子さんがどんな気持ちでその名前読んでいるかわからないから・・いつだって不安です」と本音を吐露する五代くん。この言葉は五代くんがずっと思い悩んでいたことです。

五代くんは第77話「春の墓」以来、こう思い、第100話「桜迷路」では響子さんの言った「五代さんは五代さんだから・・五代さんなりにがんばってくださいね」の意味が分からず、さらに「惣一郎の影」が強くなっていました。ただでさえ一刻館にいて犬の名前、毎年のお墓参り、音無家とのつながりなど毎日のように惣一郎さんを意識せざるを得なかったのですから。

自分にふがいないと思いつつも「惣一郎さんにかなわない」「響子さんの支えになることができそうにない」という気持ちに支配されてしまっていたのです。

その言葉に「それじゃあたしたち、いつまでも一緒になれませんね」「・・あなたの方だってあたしを全然信用してくれていない」と反論する響子さん。「同じものが欲しいなんて思っていない、惣一郎さんのかわりじゃない」とまで言ったのに・・・信用してもらえない・・・もうこう言うしかありませんでした。

「私、どうすればいいんですか」

「抱いてくださいって・・私の方からお願いしなくちゃ、自信もてないんですか」

「私・・もう、どうしていいかわからない」

この言葉でやっと五代くんは気づきました。自分が勝手に惣一郎さんの幻影を膨らませていたことに・・そしてそのことで響子さんを苦しめてしまっていることに・・・この瞬間、五代くんはやっと自分の中にある惣一郎さんの幻影から解放されたのです。

※ 「本当はね・・ずっと前から五代さんのこと好きだったの」は「好き」と自覚したと思える第68話「宴会謝絶」と思っています。それは全編を通じてこの時が一番、五代に対する気持ちを響子さんが考えたと思えること、その後の第73話「がんばってくださいね」で「1年くらい私待ちますから・・」と結婚を考えるような発言をし、第75話「スーツでおつかい」では五代が好きでいてくれることを両親に知られてもいいと思っていること、そして第77話「春の墓」で「惣一郎さんを自然に忘れる時が来ても・・」と素直な気持ちで独白していることからそう思っています。

その前から好意はあるんですが、あくまで響子さんの生真面目な性格や過去を見渡して一番心に残る出来事という観点からこの発言の「ずっと前」は「好き」を自覚した時と整理しています。

※ 響子さんの五代への想いの変遷を次のように考えています。

  • 気が合う弟のような人(隣は何を~惣一郎の影)
  • 好きと言ってくれた人(アルコール・ラブコール~メモリアル・クッキング)
  • 気になってしまう人(複雑夜・・~私は負けない!!)
  • 自分の気持ちをわかってくれる人(混乱ダブルス~SOPPO)
  • 好意を持っている人(ふりむいた惣一郎~落ちていくのも)
  • 好きで結婚してもいいと思える人(宴会謝絶~シルエット・ロマンス
  • 好きで結婚したいと思える人(夢一夜~)

 

■■ 第154話 TEL YOU SWEET
保母資格試験の合格発表を見に行く五代と結果の知らせを待つ響子。合格した五代は結果の報告とプロポーズをするためすぐに電話するも響子は一の瀬さんたちが始めた残念会に巻き込まれてなかなか電話に出ることができない。バイトを終えた五代は電話で響子に合格したことを伝えプロポーズをしようとするが・・・

【解説及び感想】
心も体も通じ合えたふたり。洗濯物を干す響子さんの顔は今まで見たことない優しい顔。とても印象的です。本当はこんな表情をするんだと思ってしまいました。

保母試験の合格を電話で伝える際にプロポーズをしようとするも小銭が切れてできずじまい。やっぱり五代くんはついてない・・・

 

■■ 第155話 今夜 待ってる
徹夜での合格宴会を続ける住人たちに捕まりなかなか管理人室に行くことができない五代。大事な話があるから今夜こそ行くと約束したのに宴会を断れない五代に怒る響子。なだめようとする五代とすねる響子のやり取りを聞いていた住人にふたりの仲がバレてしまい・・・

【解説及び感想】
1週間徹夜の第1次合格宴会もさることながらその3日後、第2次合格宴会に入るなんてさすが一刻館の住人たちです。ほんとに時間作る気にならないと響子さん怒っちゃいますよ、五代くん。

「今夜、部屋に行ってもいいですか?」の問いにニコッとして手を握ることで答える響子さん。大事な話があると約束したのに宴会を断れない五代くんに顔をふくらませて怒る響子さん。どちらも本来の響子さんなんでしょう。本当に幸せそうです。

※ 五代くんと外で手をつないだり、部屋を勝手に掃除したりと全然人目を気にしない響子さん。これを見ると五代くんと結ばれるまで本当に苦しかったんだろうなと思います。

 

■■ 第157話 許さん
風邪をひいた父の見舞いに実家に戻った響子は五代と付き合っていることを話すも父は「許さん」と反対する。その夜、五代は管理人室に行き「ぼくのためにみそ汁を作ってください」「響子さんの作ったみそ汁・・飲みたい」とプロポーズするもニブい響子にはわかってもらえず。そのようななか響子の父は結婚を反対するために五代が勤める保育園へ向かい・・・

【解説及び感想】
両親に五代と結婚の意思を伝えた響子さん。父の反対は予定どおりですが母は本当に嬉しそう。再婚させるためにいろいろな強行手段を使っていた時の顔と全く違い優しい顔をしています。

みそ汁を使ったプロポーズをしようとするものの響子さんに分かってもらえずの五代くん。すっかり忘れていましたね。「響子さんの作ったみそ汁・・飲みたい」で「ちょうど惣一郎(犬)の朝ごはんに残してたんです」とみそ汁を出す響子さんは最高です。五代くん、惣一郎の影を払拭できていて本当に良かったです(笑)

 

■■ 第158話 約束
保育園で五代に会えなかった響子の父はキャバレーに向かい「結婚は許さん」と五代へ告げる。しかし風邪をおしてきていたためそのままダウンしてしまう。父が来ているとの連絡を受けキャバレーへ向かった響子は五代とともに父を実家に連れて帰ることに。父を背負って実家に送る途中、プロポーズした五代に響子は「一日でいいから私より長生きして」と答えて・・・

【解説及び感想】
「結婚してください」と素直な言葉でプロポーズした五代に対し「ひとつだけ約束・・守って」とお願いする響子さん。その約束は「お願い・・一日でいいから、あたしより長生きして・・」。

響子さんのこの言葉。キャバレーで響子さんの父が言った「おれはもう響子の泣き顔を見るのがいやなんだー!!」を気にかけたのでしょうか。それとも惣一郎さんとのつらかった思いからでしょうか。いやどちらもなんでしょうね。父にもその思いが通じ結婚を許してもらえました。

涙を浮かべながら「もうひとりじゃ、生きていけそうにないから・・」と言う響子さん。本当に五代くんへの想いが詰まった言葉です。五代くんが思っていた以上に響子さんは五代のことが好きでそして必要としていたのですから。

 

■■ 第159話 形見
五代の実家へ挨拶に行く響子。実家の定食屋を開けてふたりを待つゆかり婆ちゃん。そんなゆかりばあちゃんは五代へは結婚資金として自分の葬式代として貯めていた貯金を用意し、響子へは形見の品である指輪を渡し裕作と一生添いとげてほしいとお願いする。

【解説及び感想】
迎えに行った駅で「うちの響子さんら」と迎え、実家の定食屋を開けて待つことにしたゆかり婆ちゃん。響子さんの緊張をできるだけ解いてあげようとする心遣いです。響子さんのことを一刻館で見ていますし、再婚だから両親へのあいさつ時には不安があるだろうとわかっていたんですね。響子さんもそんなゆかり婆ちゃんだから気が合うんでしょう。ふたりの結婚に大きく貢献しました。

※ 実家に向かう新幹線の中、「・・あたしのこと全部ご承知なんでしょうか」「年のこととか・・二度目だし・・」と五代に尋ねる響子さん。「自分は未亡人だから」というような言葉を使ったのは5度目ですが、初めて五代くんに言いました。五代くんは初婚だしずっと気にしていたんだと思います。

 

■■ 第160話 桜の下で
挙式を来週に控え、惣一郎さんのお墓参りを済ませ五代と新生活を始めるために管理人室を掃除する響子。しかし惣一郎さんとの結婚写真や遺品を見て涙ぐんでしまう。「遺品を返してケジメつなくちゃ」と話す響子の姿に五代は惣一郎さんのお墓に行き「あなたもひっくるめて響子さんをもらいます」と語る。それを聞いていた響子は「あなたに会えて、本当によかった」と手をつなぎ・・

【解説及び感想】
第153話「契り」で五代くんの中の「惣一郎の影」は払拭することができましたが、響子さんの中の惣一郎さんはまだ解決していませんでした。

「契り」で響子さんは「惣一郎さんを消すことなんて・・できるはずないのかもしれません」と五代に言っています。第77話「春の墓」では「自然に忘れる時が来ても・・許してください・・・」と惣一郎さんに語っています。そう、響子さんは五代と結婚するために「惣一郎さんを忘れなくてはいけない」と思い苦しんでいたのです。

結婚を来週に控え、五代と一緒に住むために管理人室を掃除していた時に出てきた惣一郎さんの遺品と結婚写真。その写真を見た五代くんが「へえ、惣一郎さんの写真・・初めて見たけど、やさしそうな人ですね」と言うのに対し「ごめんなさい」と謝る響子さん。その後、ひとりきりの管理人室で遺品を前に惣一郎さんを思い涙ぐんでしまいます。

遺品や結婚写真は早く整理しなくてはと思っていたのでしょう。でも惣一郎さんを忘れようと思えば思うほど遺品を音無家に返すことができなくなった。多分、結婚式までに忘れなくてはとずっと思っていたのでしょう。でもできそうにない。涙ぐんでいる姿を五代に見られ「明日にでも音無のお義父様にお返ししてきます」「ケジメつけなくちゃ、ねっ」と話すも翌日、保育園に出勤しようとする五代を「もうあなただけなの・・」と後ろから抱きしめる響子さん。その姿は私を信じて欲しいという気持ちとともに惣一郎さんへの想いに引きずり込まれないよう必死に五代にすがっているようにも見えます。

後ろから抱きしめられた五代くんは冷静に響子さんを見ていました。そして「もうあなただけなの・・」という言葉を思い浮かべ、昼休みに惣一郎さんのお墓へ行くことを決心しました。「自分は響子さんに救ってもらったのだから今度は自分が響子さんを救わなくてはならない。そのためには惣一郎さんと話をしに行かなくては」と。

「正直言って、あなたがねたましいです・・」と正直な気持ちから語り始める五代。「春の墓」で「・・まだ忘れてないんだ・・」と思っていますから五代くんも忘れて欲しいと思っていたのです。「遺品返したところで響子さん・・絶対にあなたのことを忘れないと思う」という言葉。朝聞いた「もうあなただけなの・・」の言葉でそう確信したのでしょう。

「・・忘れるとか・・そんなんじゃないな・・」「あなたはもう響子さんの心の一部なんだ・・」と続け、「だけどおれ、なんとかやっていきます」「初めて会った日から響子さんの中に、あなたがいて・・そんな響子さんをおれは好きになった」「だから・・あなたもひっくるめて響子さんをもらいます」と宣言する五代。惣一郎さんとの思い出とともにふたりで歩んでいくとの決意の言葉。

忘れなくてはいけないと思っていた響子さんにとってこの言葉は五代の優しさを再認識するとともに自分の気持ちでもあった「惣一郎さん」という呪縛から開放するものとなりました。

「あたし・・あなたに会えて、本当によかった」・・響子さんのこの言葉にはこれまでのすべての想いが込められているようです。

※ 「なんかつらそうだな・・」と聞く五代に「違うの、未練なんかじゃなくて」と答える響子さん。第153話「契り」で「惣一郎さんを消すことはできないのかも・・」と話した上で惣一郎さんとの楽しい思い出を浮かべ話しています。生真面目な響子さんの性格からそのような楽しい思い出も忘れてしまわなくちゃいけないと思ったのでしょう。

※ お墓に行き惣一郎さんと話そうとした五代くん。このように思ったのは直前にやっと惣一郎さんの写真で顔を見たからですね。顔もわからないと話をすることもできなかったでしょうから。

 

 ※本記事にて掲載されている画像は「めぞん一刻高橋留美子小学館」より引用しております。