アニメ「WHITE ALBUM2」の感想~3人の心の葛藤と切ない音楽が織りなす恋愛物語~
2013年10~12月に放映された18禁恋愛アドベンチャーゲームが原作のこの作品。販促アニメの位置づけだったと思いますが、恋愛ものとして見ると出来はすばらしかった。
前半は学園祭での演奏に向けた軽音楽同好会の特訓等が中心で感情や本音を出さないままさらっと流れていきますが、後半は感情面を中心にこれまでを振り返る形で構成され音楽も手抜きなし。
軽音楽同好会を通じて親友になった北原春希、冬馬かずさ、小木曽雪菜の相手を思うがゆえの心の葛藤と嘘を交えた言葉の数々に引き込まれました。
最後はハッピーエンドとは程遠い内容なので「見るのが重い」と思う人も多いとは思いますが、私は大のお気に入りです。
以下、ネタバレ要素を多分に含みますのでご注意ください。
【あらすじ】
学園祭を一月後に控えた時期にボーカルが脱退し、存亡の危機に陥った軽音楽同好会の新メンバーを集めるのに奔走する北原春希は、屋上で歌っていたミス峰城付属の小木曽雪菜、第二音楽室でピアノを弾く音楽エリートで問題児の冬馬かずさを口説き落とし同好会に迎えることに成功。3人は学園祭ライブの練習を開始するが、自分たちを特別扱いしない春希に惹かれていくかずさと雪菜。3人の心に恋愛感情が渦巻き三角関係が始まる。
学園祭ライブは大成功に終わり、「このまま3人一緒にいたい」「関係が続けばいい」と思うのもつかの間、眠りこける春希にかずさがキスするのを目撃した雪菜は春希に告白&キスし二人は恋人関係になる。
それを知ったかずさは世界的ピアニストでもある母の誘いもあってウィーンへ留学することを決心。3人でいる約束を反故にしたかずさを春希は責めるが、かずさの本意は「3人でいることがつらい」と知ってしまう。
思いのたけを告げ春希と一夜を共にした記憶等を胸にウィーンへ飛び立とうとするかずさ。見送るために春希を連れ出し空港に向かう雪菜・・かずさを見つけた瞬間に走り出し、抱きしめキスする春希を目の当たりにした雪菜は、来る途中の電車で告げた嘘の想いを心の中で否定し泣きじゃくる・・
【好きな点】
10~11話の「雪が解け、そして雪が降るまで」の前後編は10話Bパートから11話Bパートの大半を使ってこれまでの出来事をかずさがどう思っていたのかを振り返る形でした。2話を使って振り返る構成は個人的には新鮮であり、隠してきた感情がどれだけ強かったのかも十二分に表現されていました。またオープニング曲に使われていた「届かない恋’13」(歌:上原れな)は今でもフルで歌えるレベルに好きでしたね。
ただこの作品が好きになった一番の理由は最終話の雪菜の言葉の数々・・かずさと過ちを犯した春希に対し「割り込んだのは自分」「かずさや春希くんに謝らなきゃ」と責めない雪菜。そして彼女はこう続けます。
「どうしてもあなたと恋人同士になりたかったから・・じゃないんだよ」
「ただずっと3人でいたかったから・・あたしを仲間外れにしてほしくなかったから」
「だから私を裏切っていない」
「ごめんね 春希くんのこと好きだけど・・かずさほど真剣じゃなかったよ」
そんな雪菜でしたが・・空港でかずさに走り寄りキスする春希とごめんと謝るかずさの姿を見て泣きじゃくり独白した言葉は・・
「そんなわけないじゃない」
この言葉を聞いた瞬間に忘れられない作品になったのを覚えています。春希の下手なギターに合わせるピアノの音を聞いていた雪菜だから、いち早く二人の気持ちに気付いていた・・二人の間に割り込んだとわかっていた・・だからこそ眠りこける春希にキスするかずさを見て抜け駆けしてしまった・・
一方、かずさで印象的だったのは、道端でキスした直後に泣きながら春希に言った言葉・・
「なんでそんなに慣れてんだよ・・」
「雪菜と・・何回キスしたんだよ・・」
こんな直接的で生々しい表現はなかなかお目にかかれないもの・・18禁恋愛ゲームならではの言葉使いでしょうね。でもこの言葉は雪菜の「そんなわけないじゃない」と同様に心に深く刻まれました。素直になれないかずさの本当の心の声だと思いましたから・・
二股掛けた春希のことをクズ扱いする意見もあります。ただかずさにほどではないものの少なからず好意を持っていた雪菜から迫られたのだから了承してしまうのは普通にあり得ること。原作のゲーム自体は知りませんが、アニメで描かれた内容の範囲だけでは決して責められるものではないでしょう。雪菜とつきあい始めたことは翌日にかずさに報告・・かずさを好きな事も雪菜に正直に話すなどフラフラしながらも誠意を示そうとはしていたと思いますしね。
かずさは旅立ち、残された二人の心は離れたまま・・と全くハッピーエンドではない悲しい結末でしたが、最後はそれぞれの感情をさらけ出し、人を好きになることがどれだけ大変で奥深いことなのかを考えさせられるものでした。